頂上戦争が終わり、後片付けは永遠に長引いてる気がする。補強のしようもない海軍本部は新世界に渡る案も出ているそうだ。必ず通るシャボンディ諸島を見捨てるのかという意見も出ていて、こちらも終わりそうにない。
あえて氷の地面を消さず、足場として動いてくれる氷の大地であの時のことを思い出す。あの時、僕は本当に死ぬと思ったんだが。まさかの赤髪が止めてくれるという奇跡が起きた。気を失ってたからよくわからないけど、ヘルメッポさんが言ってた。ルフィさんはトラファルガー・ローの船に乗せられて消えたそうだ。もう何週間も過ぎてる。どこでなにをしているんだろうか
「開かない顔だね」
ひらりと目の前で舞ったのは将校コートじゃなくて、白衣。軍医の彼女が立っていた。あまり同じ講座を受けたことはないけど、僕がよく怪我をするから顔見知りだ。よいしょと持ち上げていた木箱を下ろして僕の隣に立つ。あの時見ていた人盛りは消えて、壁の補強や橋の補強に回る海兵たちを見つめる
「あれから、赤犬さんは怒ってないの?」
シュボッと音がして隣を見れば、ジッポから火を灯してタバコを吸っていた。
「怖くて近寄れませんよ」
頭をかきながら笑う。タバコを指で支えながら微笑んでくれる。
「殺されるかと思ってました」
「だろうね」
さっぱりと話すからちょっと苦笑い。お互い無言でなんとなく本部を見つめる
「これから先、どんな時代になるんでしょうか」
ぼそっと呟いた独り言に近い言葉を彼女は掬った
「世代交代、だろうね。白ひげが死んだんだ。次の時代を担う者が出てくるよ」
「次の世代ですか」
「嫌でもなるんだろうね。次の世代の顔ってやつに。麦わらにしかり、最悪の世代の誰かにしても。今の七武海も四皇も、胡座かいてたら首を絞められてるんだろうね」
トントンとタバコのススを地面に落とす。
「海軍だって、変わるよ」
塞ぎ目がちの彼女をみる。時代の変化はちょっと怖いところがある。
本部を前に見つめて、ずっと思ってたことを言う。
「僕、swordになろうと思うんです」
まっすぐ見つめる本部は形が崩れてて、僕が立ってるここだってそのうち溶けて消えてしまう。消えてしまうものが多い世の中で、消えないものはなにがあるんだろう
「なぜ、私に?」
半分まで吸ったタバコは紫煙を彼女の指先から空に向かって伸びてる。彼女の方を向いたら、綺麗な黒い瞳がこちらを見つめていた。
「な、なぜでしょう。なんとなくですよ」
あははと笑ってみれば、彼女もふっと短く笑う
「じゃあ、辞表。出さないと」
タバコの呼吸を一つしてから、彼女も本部を見ながら呟く。
「ついでに、遺書も書いておきなよ」
遺書。復習するように呟く。紫煙が崩れた本部に浮かぶ。
「何かあってもいいように」
ふふと笑う。
「だ、誰に渡すんですか。そんなの」
誤魔化すように笑って話せば、吸い終えたタバコを携帯灰皿に押し付けて捨てる。
「渡すのは誰でもいいんだよ。どうせ、返事がもらえない手紙だよ」
白衣をはためかせて数は先に歩いていく。正義が書いてない白い背中。絶対的な指針を持たずに歩くのは大変だろう。全てが先に進もうとしている。僕が進む先がどうか、望む世界を実現できる未来であることを切に願う。