ダブルネーミングには敵わない


潜水艇であるポーラータンク号が浮上して、夜間航海をしているのは割と珍しい。不寝番や見張りを必要とするからシフトも少し変化する。
「お疲れ」
ひょこっと見えたのはピンク色のキャスケット帽子。2階にある見張り位置にシフト交代で来てくれたシャチ。シャチみたいな斑模様の帽子を撫でる。
「なんだよ」
ゆっくり登って私の手が帽子から外れる。隣に座って濃いサングラス越しに私を見つめる
「相変わらず、かわいい帽子だね」
私の褒め言葉にちょっと眉間に皺を寄せる。
かわいいって、やっぱり嬉しくないのかな。でも、自分の持ち物を褒めてくれてるって結構いいことだと思うんだけど。ムッとしてる彼を見てから帽子に目線を飛ばす。
今宵は月が満月で敵船が来ても、獅子化したベポが居るから安心。甲板も明るく見える。キャプテンを新世界入ってすぐにパンクハザードで見送って、指示通りみんなでゾウに向かってる。なんでも、千年も生きている象の上にある都市らしい。となると、千年も続く大都市。ベポは記憶がないからって言うけど、ちょっと楽しそう。
本当はみんなキャプテンについていきたかったけど、それを良しとしないからみんな引く。私たち、キャプテン大好きなのに。無茶しないといいなあ、無理だろうけど。ムリをするから離れたんだろうな
「キャプテン、元気かな」
自分用で持ってきたコーヒーに口をつけている彼の意識がこちらに向いたのがわかる。
「さぁなぁ。元気なんじゃねぇの」
旗揚げの時からの人だから、余計に気になるのかも。ちょっと言葉に元気ない
「小人になれたら、着いていけるのに」
私の言葉に首を傾げる。ちょっと面白くて笑っちゃった。
「そうしたら、バレずにサポートもできるしついてっても問題ないでしょ?」
ポケットに入ってさ。なんて、御伽話みたいなことを言えば彼は面白かったのか盛大に笑う
「ワッハハハ!!なるほどな、たしかに!いい案だ」
他にも色々と話すことあるかもなのに、やっぱり話題がキャプテンになっちゃうあたり私たちはみーんなキャプテンのこと大好きなんだろうな。
月夜に照らされる海を見て、視界にどうしても入るキャスケットを見つめる。
「おまえ、この帽子好きだよな」
「帽子が好きなんじゃないよ、シャチが好きなの」
ちょっと固まって時間を数秒置いて、そうかよってつまらなそうに言う。シャチっていいよね。かっこいいし強いし、でも、見た目可愛くて。大きいし。家族仲良くてさ。自分が知り得るシャチの情報を話せていけば無言になる彼。飲み進んでないのにコーヒーカップから口を動かさない。
「なに?」
首を傾げても、微妙な動きでカップから口を少し離す。ゆっくり私を見つめてくるからもっと首を掲げる
「・・いや、なんでもない」
なんだよ、気になるじゃん。眉間に皺寄せても彼はもう私のことを見なかった。なんとなく動きたくなくてそのまま居たけど疲れてきて、彼にもたれる。彼の肩と二の腕に頭部から背骨を沿わせるようにもたれる。キャスケットの白い部分が見える。人差し指でぷすりとついた。ああ、眠たい。
夜が明けるのを感じながら瞼を下す。寝る前に感じ取れた彼の空気はちょっと居心地悪そうだったけど、ごめん、気にしてられないほど眠いから、また明日ね。意識を手放す瞬間、彼がため息ついたのだけは覚えてる。



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