椿オイルを3滴ください


はあ、今日も美しい。
さらりと蛇姫様の髪の毛が揺れる。ありがたいことに蛇姫様の支度係となった私は今日も彼女の美しい髪に櫛を通すことを許される。鏡越しであっても消えない美しさにサングラスをかけたくなる。鏡乱射してる
「なんじゃ」
ツンとした口調に割と柔らかい声。ああ、素敵
「いえ、今日も美しいです」
惚れ惚れする。鏡越しでも目が合うのが嬉しい。ああ、そんな見つめないで。鏡に映る自分が全く可愛くも綺麗でもなくて嫌になる。すべてが整ってる彼女と比べるのもアレだけど。流石にこうも並んで写っていると嫌でも比べてしまう。スッと目線を鏡越しの私から手元のお茶に移される。ああ、お茶を飲む姿も素敵。そのカップになりたい。蛇姫様に毎回キスされるなんてなんと羨ましいことか。
お茶を飲んでカップを置いて、ため息をつかれる。最近多いそれは恋煩いという病らしい。想い人の麦わらのルフィは蛇姫様の告白にものともせずに自船に戻ってしまった。恋煩いがよくわからないが、辛そうだ。鏡越しで見てみれば、両手を頬にあてて頬を赤らめ潤んだ瞳でルフィと呟いてる。呟く声の甘いこと。こっちの心臓が破裂しそう
「そなたには、想い人はおらんのか」
目があって微笑みかけると蛇姫様は私に質問してくれる。またに気まぐれで私に質問をしてくださる。嬉しい。もっと会話したい
「残念ながら。おりません」
困ったように笑えば、鼻で笑われる。うーん、性格だけは悪いんだよね。でも、そこがいいんだよなぁ、悪女って感じで。なんてセクシー
「ルフィに嫁ぎたい」
蛇姫様に嫁がれたいほど想われてるのに、2年間もモノともしないなんて。男が好きなのかな
「なんじゃ」
考え事してた私に気づいて声をかけてくれる。幸せそうな顔がキッと一瞬で締まる
「いえ、ルフィは蛇姫様にこれだけ想われて幸せだなと」
「フン、突然じゃ。わらわは美しいからな。それでも一筋縄ではいかないからこそ、萌えるのじゃ」
「燃えるんですか」
「ふん、恋も知らないそなたにわらわから教えてやろう」
上機嫌な蛇姫様。美しい造形の指先で私が梳かした髪の毛を可憐に靡かせる
「恋はいつもハリケーンなのじゃ」
思わず拍手してしまった。フッと鼻で笑って機嫌が良くなるのもかわいい
「素晴らしいです。私もいつかそんな人に出会いたいものです」
なんて言ってみれば、黄金配置の眉毛が動いて皺がよる
「いいですね。恋ってやつ。したら可愛くなるらしいですよ、外界の小説に書いてありました」
可愛くなりたいものですと呟けばもっと眉間に皺がよる。
「何を言っておる。そなは綺麗じゃからわらわの世話係りに任命したのじゃ」
なんて嬉しいお言葉。妾が一番じゃがって、そりゃそうです、世界でいちばんの姫様です。色んな意味で
「光栄です」
「あと、その半歩引いてる姿勢は好ましい」
鏡越しに目が合って、初めてちゃんと褒められた。嬉しいとニヤニヤしてたらまた眉間に皺ができる
「恋煩いでこの島を出たものも少ないはないが、そなたもそうならぬよう気を確かにな」
なりませんよ、こんなにも素敵な貴女がいるのに。普段誉めるという行為を全くしない姫様に褒めてもらえた。面と向かって言ってくれればいいのに。それは烏滸がましいか。
普段口にしないことを口にしたからか、早いスパンでなんじゃと聞いてくる。鏡越しでしか目を合わせてくれない。なんでもないですと笑いかければフンと目線を外して他の物に目線を飛ばす。仕上げのオイルを纏わせて、鏡越しで完了をお互いに察知する。貝殻のような爪先で髪を弄ぶ。
今日も蛇姫様は美しい。



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