古い古城の夜は割と騒がしくて慣れるのにちょっと時間がかかった。朝が苦手なペローナちゃんは気まぐれにしかベットから降りてこなくて、朝ごはんは作らず起きてきてお腹すいたと呟いた時だけパンケーキを作ってあげてる。今日もリビングには現れず、ミホークさんとゾロくんの朝食と自分のコーヒーだけ用意した。
「ごちそうさん」
ゾロくんはいつもちゃんとお礼を言ってくれる。嬉しい、今日も完食だ。食器はそのままでいいと伝えているからそのままにして、鍛錬に向かう。ミホークさんはまだ優雅にコーヒーを啜りながら新聞を読んでいる。
「ゾロくん、大きくなりましたね」
ふと部屋から出る背中をみて呟くとミホークさんは新聞から目線をあげた。
「筋力が上がるのはいいことだ。だが、しなやかさが足りない」
そう呟くとまた新聞に目線を落とした。
「ホロホロホロ〜」
「おはよう」
珍しく朝からペローナちゃんが起きてきた。眠たそうに口癖というか笑声を出しながらクマシーを抱えてる。
「お腹すいた〜」
「うん、今作るね」
ゾロくんのお皿を持って台所に戻る。彼女用のパンケーキミックスはいつも冷蔵庫に眠ってて、それを混ぜて作るだけの簡単な朝食。ゾロくんは魚が好きみたいでいつも魚を取ってきてくれる。泳ぐのも体力いるから鍛錬ついでだって。優しい。
「今日のは、ラズベリーのジャムにした、よ」
焼き上がって甘い香りが鼻腔を占める。色もいい感じ。最近積んできたラズベリーのジャムが完成したからそれをつけてあげて、喜ぶかなあって持っていったらなにやら、ミホークさんと喧嘩中。いつものことだけど、海賊同士だからちょっと、一般人には怖い
「んだてめ!私のホローでも喰らわせてやろうか?!」
「ふん、無駄だ。無刀で斬り殺されたいか」
なんとも物騒な。慣れてるからいいけど、前までは怖すぎてケンカしてたら台所に避難してた。じゃがいもの皮剥きとか
「ほらほら、ペローナちゃん。おまたせ。今日はラズベリーのジャムにしたの」
落ち着いてとペローナちゃんの前にパンケーキと紅茶を差し出す。でも、ペローナちゃんは落ち着かず、フーフーと息を巻きながらミホークさんに突っかかる
「小娘が」
お腹すいてるからイライラするんだよと伝えて、巻いてた息が落ち着いたのに、ミホークさんが余計な一言をボソリと告げる。新聞を畳む音で誤魔化せてない。誤魔化す気なんてないと思うけど
「んだとー!」
怒ったペローナちゃんはガタリと席を立って、ネガティブホロー!と叫び幽霊ちゃんたちを出す。空を舞ってミホークさんに突撃するけど、伊達に剣豪してないミホークさんは、ひと呼吸入れて自分が使ってたナイフを一振り。幽霊ちゃんたちが切れると同時に天井も大きな音を立てて無惨な切り傷ができた。パラパラとかからが落ちる。ああ、そこは昨日磨いたばかりの
「なにごとだ!」
あまりに大きな音だったからか、気配だったからか、ゾロくんも飛び込んできた。ペローナちゃんはあまりの衝撃に口が開いたままになってて、ミホークさんは静かに刃こぼれさえないナイフを戻してた。
「な、なにすんだ!てめぇ!」
幽霊ちゃんを切られて怒るペローナちゃんはテーブルを叩いた衝撃で紅茶がポットごと倒れてパンケーキにもこぼれる。ああ、テーブルクロスが、せっかくのパンケーキとジャムが
興味が失せたミホークさんはコーヒーを啜ってて、ゾロくんはナイフで切ったという天井をずっと眺めてて、ペローナちゃんはパンケーキより無視してくる彼に怒ってて。私の仕事が増えて、私の頑張りが消えて、私の楽しみも消えて
気づいたら近くにいたゾロくんの刀を一本鞘から抜いて、ペローナちゃんの喉元に刃先を向けていた。お行儀悪くテーブルに乗り上げて見下ろし、ペローナちゃんは蒼くした顔で私を見上げる。
「ご飯中、です」
ミホークさんは無言でこちら見ている
「食器で遊ぶなんて、罰当たりです」
何も言わない2人にちょっとイラッとして、身を引く。もう知らない。悪いと思ったし八つ当たりだけど、ゾロくんに無言で刀を返して外に出る。ムカつくからたくさん洗濯物回して干そう。
私がいなくなったダイニングで盛り上がってるのも知らずにそう意気込んで各部屋のシーツを回収しにいった。
「見事な動き」
「あいつ、剣術使えたのか」
「教えてはない。初めて見た」
「気配もなかった。抜かれたことに気づきもしなかった」
「お前と共に教えてやってもいいかもしれん」
「いやいや!なんだ、あいつ!!いつものほほんとしててかわいいのに!なんだよ、幽霊よりコエーじゃねぇか!!」