舌舐めした僕の唇


吸い終わった葉巻を灰皿に押し付け、新しい葉巻を咥え火をつけようとした時、隣から火を差し出される。チラリとみればタバコを咥えた女。
つい最近、航海士と船医として連れてきた。ダズと荷物を積んで出航しようとしたら、今から積乱雲が来ると晴天の下で告げるからなんとなく、出港を1日変更した。予想は見事に的中。翌日同じ港でせかせか働いてるところを捕まえて船に乗せた。最初こそビビってたが、数日すれば慣れたのか仕事をきっちりこなす。ノリが良いってことか。
オレとは違うタバコを好んで吸う。咥えながら次の島への航路を地図と睨めっこしながら考えてる。船医なのはこいつが治療系の悪魔の実の能力者だから。料理も焼くだけならできる腕を持つ。雑用してたからか、仕事が多くても文句は言わない。便利なやつ
「ぼすー」
のんびりと呼ばれるから目線を移すが、地図から目を離さない。片手にペンをもう片手に白いタバコ。
「4日くらいです」
ログが溜まるのが4日か。まあ、順当でいいか。
「ああ」
短く答えれば、その島に向かう航路を練ってくれる。秋島が近くて秋空になってきた。薄い雲と秋特有の太陽の照りを窓越しに眺めながら紫煙を吐く。オレのとは違う、甘い香りがして横を見れば、仕事が終わったのがオレの隣に近寄ってきた。
「なにか?」
首を傾げながらオレが座るソファ前で止まる。特にようはねぇが、声をかける
「お前のは、甘いな」
「ああ、ウィンストンのバニラです。良い香りでしょ」
「あめぇよ」
ふふと笑った。タバコを咥えてかかってた髪の毛を下ろす。鎖骨下まで伸びてる黒のストレートヘアが揺れる。
「今日、ご飯なにが良いですか?」
ダズは次の次の島で合流予定だ。2人だけのご飯は初めてだ
「ボスと2人なんて、初めてですね」
同じことを思ったのか口にしたから、チラリと見る。目があって微笑まれる。
「お肉?」
ステーキにしましょうか。マッシュポテト添えて。こいつの提案に腹が少し減った気がするから頷けば、了解ですと笑う
紫煙が舞い合う部屋は太陽の光を頼りに灯りは消してる。会話が終わってもこちらを見てくるから、なんだと目線で飛ばせば、少し泳がせる
「いろ、っぽいなと思いまして」
あ?どいうことだ。オレの目線に気まずいのか少し逸らす。それが妙に面白くて口を上げる
「ただ吸ってるだけだろ」
「それが、色っぽいんですよ」
フーと紫煙を吐く。口紅が少しついた白いタバコ。細くて指で挟んでる。貝殻みてえな爪が太陽の光を反射させてる。
「あめぇ」
「バニラですから」
ふふと笑う。ちょっと楽しそうだ。おい、もっと嗅がせろ
「ボスのは苦い?」
さぁな。口の端を上げたまま咥えていると、ソファに腰掛けるオレの上に座ってくる。白いタバコを口から抜いて反対の手でオレの葉巻を抜く。トレードするように口に突っ込んでくるから咥えてやる。軽いな
「ん、重い」
同じことを思ったか、逆の言葉だが同じ感想を持ったようだ。
「でも、ボスの匂い」
もう要らないと直してくるから、白い方を強めに噛んで抵抗したら驚いてやがる。
「ああ、お前の匂いだ」
そう呟いて白いのを吸う。そいつが持つオレの葉巻を奪って灰皿に押し付ける。フックの腹でこいつの腰を少し押せばこちらにもたれるように手をつく。フーと白い煙を吐いてやれば首筋に顔を寄せて鼻を鳴らす
「ボス、私とお揃いだ」
ね。なんて、口じゃなくて首筋で言うもんだから笑っちまう。おねだり上手か?
白を挟んでた細い指でオレの頬にかけてある線をツーと辿る。
「甘いのちょーだい」
口が苦いんです。ああ、いいぜ。甘いのやるよ
笑ってやれば喜んだように溶けた瞳。
秋の太陽に反射する灰皿にバニラを押し付けた。白よりも血色のいいソレに口付ければ、オレの葉巻が微かに残っていた。



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