二次方程式を解く


「これも絞れる?」
可愛い声がして下を見ると、絞って欲しいものを両手に抱えている
「それは、」
「かわいいデしょ」
ふふんと自慢げに持ってきたのは、野山に咲く野苺を茎ごと束にしたもの。可愛らしい野苺がたくさんついてるそれを両手いっぱいに持って絞ってくれとは。可愛らしい
「どこで摘んできたんだ」
足長族だから、私を見上げるのが大変そうだ。膝を折って目線を少し合わせれば嬉しそうな顔。
「城から見えるトころ」
にひひと笑う。いいだろうと茎ごとを受け取り絞る。茎の香りが強くならないように野苺が多くある葉先を重点的に絞る。そのおかげか野苺の香りが広がって鼻を少し鳴らす
「いい香りダね」
ケラケラと楽しそうに笑いながらコップを花の下に用意し、汁を溜める。そうだなと頷いてやればもっと嬉しそうだ。
「姉さんは、なンでも絞れるからなンでも新鮮ダね」
おいしーと言いながら飲む笑顔にこちらも微笑んでしまう。
「姉さんも」
どーゾとコップを差し出してくれる。優しい妹に微笑えみ受け取る。コップを近寄せれば野苺の匂いが鼻腔をもっと占領して少しクラリとする
「美味いな」
私の呟きに、ンね。と同意してくる。
ママのお気に入りの子。その純粋な笑みは純粋過ぎて少し怖い。いちじくを潰したような瞳にはよく焼けたガトーショコラみたいな瞳孔がついてる。歯が少しギザギザなのはどこの種族だったか
「ママも気にいルかな」
首を傾げて聞いてくる。ああ、そうだなと頭を撫でてやればまた嬉しそうな顔。
「姉さんは、ほんとウになンでも絞れる?」
撫でながら肯定してやれば、ちょっと含んだ笑み
「死んだ身体も?」
ピタリと手が止まる
「ソの近くにいルの。赤いカらおいしソうダなって」
にひひと笑う。変わらないはずの笑み。だが、全く違って見える
「誰が、いるんだ」
震えたか?いや、そんなことない。撫でてた手を頭のまま聞いてやれば
「知らなイの。でも、悪い匂イがしたの」
たまに運が悪く万国にログを溜めないといけない海賊がいる。その類か?5歳児みたいな笑みを浮かべて、絞れるかどうかの答えを待ってる。少し喉を唾で潤して向き合う
「ああ、絞れるぞ。だが、旨くはないだろう」
教えてやれば、悲しそうな顔。ちょっと罪悪感を抱くが、これでいいはず
「じゃあ、やめル」
「ああ、やめておけ。代わりにとっておきのスムージーを作ってやる」
私の言葉に、花を咲かせたような笑みを向けてくれる。かわいい。可愛いが意識を変更できたことに安堵する。
「なに作っテくれルの?」
お楽しみだと伝えてやれば、楽しみだと喜んでくれる。手を繋いで歩けないから、抱きかかえてやれば私の首に腕を回す。どろりとしたいちじくの瞳がこちらを向く。
「いつカ、みんなノ味も知りたイな」
無邪気に笑うから口元が引き攣る。首を傾げてくるから
「また、いつかな」
なんて永遠に来ない日を伝えれば、楽しみだネと笑う。
空腹で寿命を食べるママも怖いけど、好奇心で人の味を知りたがるのが一番恐ろしい気がする。好奇心は猫をも殺すとはよく言ったものだ。



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