カステラの底に埋まる


パキッと音がして振り返れば、自分が作り上げ寛ぎ終えた社が乾燥からひび割れを起こしていた。ふむ。新しい社を再建するか
「これ、美味しいの?」
声がして反対方向をみれば、綿飴をゼウスのように作り出して宙に浮く妹。うつ伏せで寝転がって肘をたて頬を支え、両足をパタパタさせてる
「ああ。だが、もう乾燥して味は失ってる」
「ふーん」
割と興味なさそうな口調だ。ふわふわと浮かんでる妹はひび割れた社を眺めながら無言だ。何か用があるのかと思ったが、特にはないようで
「なにかあったんじゃねぇのか」
近づいて聞いてみるが、ちらりとこちらに視線を飛ばすだけでまた社に目線を戻す
「用がないと会っちゃいけないの?」
目線も合わせずに言うもんだからため息が出る。かわいいのか適当なのか
「ダメなわけじゃない」
「じゃあ、いいじゃん。私もお兄ちゃんとおしゃべりしたいし一緒にいたい」
なんのことだと見るが、社に目線を飛ばしたままだ。
「お兄ちゃんから甘い香りがする。メリエンダしてた?」
くるりとした瞳がこちらを向く。聞かれることはわかっていたから素直に頷く
「いいなぁ。私もお兄ちゃんとメリエンダしたい」
ダメ?と問いかけてきてる気がする。
避けた口も背をつけて食べる背徳感も、誰にも知られたくないし晒すつもりもない。無言で立っていれば、ため息をついて諦めた口調で「ダメかー」と呟く。
残念そうな妹に少し罪悪感を抱きながら、無言で立っていればニコリと笑われる
「お兄ちゃんは、ブリュレお姉ちゃんに優しいから。私にも甘くなって欲しいなって」
「贔屓をしているつもりはない」
「うそー、私のこと、そんなに好きじゃないでしょ」
なんてこと、そんなことない。妹はみんな可愛い。弟だってそうだ。上の兄姉も大事だ。
拗ねたような顔をするもんだから、どうしたらいいかわからなくなる。慰めるのは得意じゃない
「今度、私とお出かけしようよ」
野原で昼寝か?背中はつけないと言うのに
「お昼寝しよう。野原でさ」
「いいが、寝転ぶことはないぞ」
「あー、また、先読みしたでしょ。やめてよ、人との会話でそんなの使うの。かなしいー」
むくりと起き上がりぺたんと綿雲に座って項垂れるから内心焦る
「悪かった」
「ほんとに、それ思ってる?」
ぷくっと頬を膨らませながらこちらを睨む。怖くないその表情にため息をつく。そんなんだから、いつまで経っても海賊らしくないのだ。
力も望まず、のんびりとテキトーに生きてる。食べたい時に食べて、各島のお手伝いに現れたり現れなかったり。妹のプリンの性格にも臆することなく、目が3つあるからと、化粧の練習に借りてるのをみたことがある。
「ああ、ほんとうだ。ちゃんと反省してる」
オレの言葉に瞬きをひとつして、ニヤリと笑う
「じゃあ、今から行こう。社も終わったなら眠くならない?」
お兄ちゃんに特別なソファを作ってあげると寝転ばないようソファを作ってくれるそうだ
「そしたらね、その膝で私が寝るの。ねぇ、抱っこして」
両手をこちらに広げてくる。まったく、可愛いおねだりだ。ため息をついて綿雲から持ち上げる
「オレの膝は硬いぞ」
「大丈夫。綿雲で枕作るから」
それは、オレじゃなくてもいいのではないか。そう思ってチラリと上機嫌でオレの首に腕を回す妹を見れば、目が合って微笑まれる。嬉しそうだ
「いいの。今日は私がお兄ちゃん独り占めするんだから」
ね。と首を傾げながら言うもんだから、胸が熱くなる。まったくいつからそんな男を引っ掛けれるような言葉を使えるようになったんだ。
可愛い限りの妹が美味しく食べられないことを祈りながら、彼女のおねだりを叶えるために野原に向かった。



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