花畑を踏み躙る


*男主

タバコの匂いがして顔をあげた。
「なんだぁ、腹でも空いたのか」
食堂に入ってきたのはここの主人。相変わらずの素敵眉毛を維持して長い前髪が揺れた
別に腹がすいたわけでもないが喉が渇いてここに訪れた。
「紅茶しかねぇぞ、冷めてっけどな」
男のことなんて髪の毛一本世話しないように見えて、食のことになると話は変わってくる。そういう自分の役割に忠実なのは見習うべきことである。紅茶でいいと頷くと棚からカップを取り出して紅茶を入れてくれる。冷めても香りが高く美味いんだからサンジの腕は確かなモノだ。
「サンジはさ」
食堂のテーブルに腰掛けて、向かいのキッチンに立つサンジに話しかける。野菜を洗い始めたからタバコは止めたようだ
「あ?」
「俺が女だったら、世話してくれんの?」
なんとなくふとした疑問をぶつけてみる。どんなに女が100%悪くても男が悪いと顎蹴りしてくる奴だ。チョッパーという性別が人間としては曖昧なやつは別にして、俺のこととか守ってくれんのかな
「はぁ?気持ち悪いこと言うんじゃねえよ」
モノすっごく嫌そうな顔をする。別にそこまで嫌がらなくてもいいだろ
「もしもだよ。俺が女になるんじゃなくて。女として俺が生まれてたらだよ」
言い換えると少し考えるような仕草をする
もし、サンジが女だったらか。めちゃくちゃ男好きだと思うから俺はちょっと逃げそう。押しに弱いし強すぎるやつは苦手だ。でも、胃袋掴まれたらどうかな、コロンといってしまうのかもしれないな
「そりゃぁ、女だったら世話くらいしてやるよ。俺の腕はレディのためにある」
じゃあ、その脚はルフィのためだな。サンジが少し照れたように笑う。一時離脱危機があってからサンジはルフィの摘み食いを1ミクロン許すようになったような気がする。前はもっと全力で怒ってた
「好きなもん作ってくれる?」
「おお。もちろんだ」
「いいなぁ、毎日サンジ特製のカレー食えんのか」
「お前は、毎日同じもの食ってても飽きねぇもんな。このコック泣かせが」
ハハと軽く笑う。サンジとの会話は割と静かに進むことが多い。フランキーのように変態チックに会話することもないし、ブラックのように下世話な話もない。チョッパーのように可愛がられることのないけど。いや、それはこちらからも願い下げだ
「毎日同じは落ち着くんだよ」
「栄養不足になるだろ」
「そうかな、別に変なもの食べてないだろ。野菜、米、肉、な?」
「な。って、そんな簡単に栄養取れんなら、今時コックも医者もいらねぇだろ」
飲み終わったカップを持ってキッチンに向かう、水道が空いたから洗おうとしてサンジがそれを奪う
「それくらいするよ」
「ああ、そうだな」
そう言いつつ使った泡立て器と共に洗ってくれる。ほんとに、優しい奴
「サンジ。靴紐解けてんぞ」
ふと脚ものを見れば右足の靴紐が解けていた。全く大事な足と靴だろう。俺はしゃがんで片膝ついて靴紐を結んでやる。上からは蛇口から滝の音
「ほら。キツくないか」
立ち上がる途中顔を見れば、前髪がこちらを向いててわからなかった
「あ、それ拭くよ」
カゴが割とパンパンになっててカップが置きにくそうだったから布巾とデカいボールをとる
「お前は」
サンジが口を開いて小さくきく
「俺が女だったら、どうすんだ」
質問返しされたが先ほど思っていた通りだ
「サンジは、めちゃくちゃ男好きだとおもうんだよ。押しが強そう。でも、料理うまいから逃げられないだろうな」
ショッピングでナミみたいに服じゃなくてデカい魚買ってくるんだろうな。笑いながら伝えるがサンジはもくもくと野菜を切っていた。なんだ、不機嫌か
「お前は、いい王子様になるんだろうな」
ポツリとつぶやいたから、ハア?と声が漏れた
「王子サマ?俺が?お前のが向いてるだろ」
ホンモノだしな。なんて茶化す。サンジは少し面食らった顔をしてハッと笑い出す
「だろうな。俺は全てのレディのために生きている」
楽しそうに話すから、そうか。と頷いてやる。甲板からルフィとウソップの騒ぐ声がして扉に顔を向ける。ナミがバタンと開けて入ってきて
「サンジくん!準備のところごめん!!ルフィがバカ高い魚釣り上げちゃって。生簀に入りそうにないの」
なるほど、今日のメインディッシュになるのか。どんな魚か見にいこうとして、俺の奥にいたはずのサンジが俺の二歩先にいる。
「んナ〜ミすわぁん!!俺が美味しく調理してやるからんねぇ!」
飛んで行ったキッチンの主人の背中を見る。おい、それシーフードカレーにできるのか



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