香ばしいチョコレートの香りに誘われて現れた現れた姉さんは、当たり前にカフェの手伝いをして当たり前のように悪くなってきたイスチョコを頬張ってる。
「腕あげたね」
紅茶を飲みながら微笑まれる。甘いものに目がないけど、特にチョコクッキーには盲目になる。
「椅子の座るところ、あえてクッキーにしたの?チョコをコーティングした」
そうなのといつもなら私の自信作について話すけど、今回は少し反応を鈍くなる。
「嬉しい。私、チョコとクッキーの合わせが一番好きなの」
嬉しそうに座る部分を頬張る。おいしーって呟きながら言ってくれる。うれしい
「すごいなぁ。いつも私の好きなものが入ってる。前は壁だったよね。全部食べきれなくて悲しかったな」
覚えてるわよ、だから、食べやすいように椅子にしたの。
でも、悟られてたかなくて
「ふん、別に姉さんに全部食べてもらおうなんて思ってないわよ。どうせ、そんなに食べれないんだから」
つい悪態をついてしまうけど、姉さんは全く興味なさそうにクッキーを頬張ってる。昔からそう、私の三つ目さえも興味なさそうにしてた。初めて会った時も、私の三つ目を見てみんな怖がったり気味悪がったりしたのに、姉さんだけこちらを見て確認したとばかりにその時夢中になってたおもちゃで遊んでた。その行動が嬉しいわけでもなく、ただ、私自身にも興味がないのだなと一瞬で理解できた。その態度は変わらなくて、ママに気味悪いと言われる時に感じる大きな波のような痛さではなく、厚さ3ミリくらいの見えない針が心臓を刺すようだった。
「今回はなんのチョコ使ったの?」
「チョコはカカオ率85%、カカオが取れる島でこの前取ってきたらしいからそれをもらったわ。小麦粉は宝船でグラニュー糖は天竜人御用達のが偶々手に入ったからそれを。卵は金の卵の黄身だけ使用。バターはあえてのどかなノースブルーの田舎の島から買い取った乳で三日三晩絞って作ったわ」
「いい素材だね」
簡易的にまとめる。それを集めるのにどれだけの時間が有したと思ってるの?
「バターが香ばしいものとは。私の好きな味だ」
悟られたくなくて下を向く。
「そういえば、この前アマンドがね」
ナッツ島の話を楽しくしてくれるけど、私の話はお終いと話を変えだすから面白くない。
「チョコとナッツもいいよね」
クッキーを飲み込んでこちらを向く。面白くなさそうな顔をバレたくなくて、いい子にしても興味なさそう。何を話してもその瞳にも姉さんの関心にも映らない。3ミリが光る。
「何怒ってんの」
「怒ってなんかないわよ!」
即座に反応したけど、やっぱり興味なさそう。
「まあ、いいや。ご馳走様。残りは持って帰るね」
私が何に怒ってるかとかを考えることもなく、クッキーを袋に詰めて帰ろうとする。
「え、もう帰るの?」
素直に反応したら、こちらを向く。
「まだ、なにかあるの?」
チョコクランキー?なんて聞いてくるから頭に来る。
「べ、別にないけど。さっさと帰んなさいよ」
しっしと手を振れば、クッキーを鞄にしまって立ち上がりこちらに手を振る。
一回も振り返らない。ああ、やっちゃった。
窓に頬杖ついて後ろ姿を眺める。チョコにだけ興味がある姉さん。少しは私の事くらい興味持ってよね。
良いも悪いも示さない無関心さにまた、3ミリ程度の針が当たった気がした。