海賊船にしては珍しい潜水艦だけど、もっと珍しいのが手術室があることだと思う。
「じゃあ、はじめるぞ」
手術室のライトがパッとついて暗い部屋にスポットライトを出す。キャプテンはビニールのゴム手袋をはめてメスをもち、ビニールシートで覆われている台に向けて一刀入れた。
切られたはずの肝臓は、もちゅもちゅした四角い透明に血を滲ませ真っ二つになった。切られた肝臓は2分割からの2枚切りにされて中身が見やすくなった。キャプテンはペラペラになった肝臓を一枚ずつ両手に持って持ち上げる。
「肝臓の中にあるここの血管が大体詰まりやすい。あと、お前らみたいに酒をバカみてぇに飲むとこの管にプリン体が分解できなかったものが通って」
キャプテンの説明はわかりやすくて、なによりも標本が見やすいのがいい。でも、さっきまで生きていたからちょっと気分が悪くなる。慣れてるシャチやペンギンはふむふむと呟きながらノート取ってるけど、新入りのジャンバールは吐きそうになってる。ベポが背中をさすってあげてる。
ノートを取っていくけど、取っていけば行くほどキャプテンの解体熱というか、外科熱というのか説明に熱が入り、肝臓の仕組みや血管の大きさ、たぶん喫煙者だったから色が悪くて、それの主な理由とか切りながら説明していくからクルーもついていくのが別の意味で必死だった。
「で、次だが」
「ちょ、ちょっとまって!」
キャプテンの話を遮った声をキャプテンがガンを飛ばすように睨む。必死に止めたクリオネは泣きそうだ。いや、吐きそうか。
「なんだ。わかりやすいだろうが」
「わかりやすいっすけど、ちょっと、待ってください」
流石のペンギンも顔を青ざめてる。
「お前ら、弱すぎるだろ。見ろこいつを、必死にノート取ってるぞ」
ぴっと親指で私を指す。いやいや、ノート取ってないんです。取れないんです。動けなくて。動いたら吐きます
フラフラと貧血みたいになって、あ、これ動いたら死ぬやつだってわかるやつ。座りたいけど座れないし、なによりも一歩たりとも動けそうにない。目があったシャチはたぶん、私の顔色を見て察してくれてる。イッカクちゃんは失神するように壁に持たれて意思消沈してるし、大男たちが床に這いつくばってる、そんな地獄絵図が手術室に広がってる。みてよ、キャプテン。絶対今それどこじゃないよ。慰めてたベポが白から青になってるよ。
綺麗だろうって、やめて切った肺の断面見せないで。肺胞なんていいから。むしろ集合体恐怖症でもっと気分が悪い。見込みあるって、心臓を目の前に持ってこられて、申し訳ないけどキャプテンの綺麗な顔の前で後ろに向かって倒れた。
唯一救いは、キャプテンに向かって嘔吐しなかったことだ。