絵空事を読み聞かせて


扉を開けた先が暗かったから、右手を少しあげて火を灯した。自分の周りくらいしか明るく見えないけど、こける心配が減った。足元を注意しながら少し進めば目当ての人がテーブルにうつ伏せになってるのを見つける。
「おい、起きろ」
火のついてない手で肩を揺すれば、揺すられた相手はハッと目を覚まして寝ぼけ具合にむくりと起き上がった。
「あれ、ねてた?」
しまったと顔を触る。部屋が真っ暗になるまで寝ていたのか。あたりを照りして蝋燭を見つけたからソレに移す。部屋が少し照らされてテーブルの上に散らばる本を見つめる。
「勉強熱心なこった」
テーブルに散らばるのは難しそうな本たち。親父のためにポーネグリフを解読するんだと息巻いてる。ニコ・ロビンに会いたいと何度も言いながら歴史書を何冊も持って、ここに籠るか。甲板で親父の膝に座りながら読んでる。
「空白の百年だって、きっとロマンが詰まってる。ワンピースと同じくらいの規模なんだよ」
なんて、政府が止めるソレを追いかけて止まらない。親父たちがいれば怖くないと、行く島行く島でポーネグリフを探す。まだ読めないと写しだけ集めては解読に励む。
「親父のためにしては、結構大掛かりな気もするが」
なんとなしに呟いてみれば、外してしまっていたメガネをはめ直してこちらを向く。
「君は、私より後に入ったからね。知らないと思うんだけど」
前置きを一つして、髪の毛をひと束にしてくるくる回して頭にくっつけてクリップみたいなので挟む。
「元々、神話を探してたんだよ」
そういえば特に戦闘能力も高くない彼女がこの船にいるのが最初不思議だった。別に今は気にもしてないが、そういえばなぜか聞いたことはなかった。
「私の国にはね、御伽話として語り継がれてる話があって」
その内容としては、こうだ。
彼女の国がまだ文明を発達し始める前。津波に襲われて島が沈みそうになることがあった。人々は船で逃げたいけど出す船は津波によって打ち砕かれ高台に逃げるほかなかった。海水はみるみるうちに高くなり、逃げた一番高いところさえも飲み込まれるのは時間の問題だった。1週間、民は神に願い。空腹と津波の恐怖に包まれてながら過ごしていると空が晴天になり、雨が止んだ。そこから白い髪をして、透き通るようなエメラルドグリーンの瞳。槍と矛をもち降りてきた。矛を前に押し出すと海は壁に当たったように全て跳ね返り、槍を空に刺すと太陽が近づき島をおおう海水が蒸発して大量の潮が残った。民は神を崇め、塩を生成しそれを神棚に祀った。
白い髪、太陽を司る。笑いながら海を跳ね除けた。いろんな解釈があるそうだが。一貫してるのはこの3つらしい。男という奴もいれば女という奴もいる。
「今だに塩は祀ってて、それが実話だという人が多いの」
「へぇ。そんな話が」
「うん、もう800年も前らしいけどね」
「えらい、前だな。なんでそれが実話だとわかるんだ」
「残ってるからだよ、社も。海水が通った形跡も。高い山の麓にある塀には取れない潮がこびりついたままだし、塩の技術力も世界一」
ほぇー。なるほどな、残ってるから信憑性が高い。
「それからね、色々と学んでいったらエルバフにね似た見た目の神を崇めてるのがわかったの」
「エルバフ?あの巨人の国か?」
「そう、エルバフにはね。太陽の神ニカがいるの。笑って助けにやってくる。解放のリズムに乗ってやってくる」
島に伝わるリズムも同じなんだよ。なんて、席を立って拳を握って踊り出す。
「トンタッタトトンタッタ。トンタッタトンタッタ」
楽しそうに踊る。なんだそりゃと笑えば彼女は立ち止まって笑う。
「ゴムのような性質を持つ、自由な神様」
ゴムで振動を起こして波を逆方向にしたって話をする人もいるんだよ。なんて楽しそうに呟く
「へぇ。俺の弟もゴム人間だ。ゴムゴムの実を食べちまったからな」
ルフィの話をすれば、目が輝く
「会ってみたいなぁ。ニカに近い、君の弟」
神になんて程遠いほど泣き虫で、世話が焼ける弟を思い出す。
「君も素敵な笑みだから、ルフィ君もそうなんだろうね」
眼鏡に俺の炎が反射している。そうか?と首を傾げる
「君の笑みは、なんというか、なんとでもなるような自信が持てるの。だから、君に似てるならそうなんだろうなって」
急に褒めるから心臓が波打つ。嬉しいけど、強いとかカッコいいとかじゃないから、どう受け取っていいかわからない。
「ふふ。どうしたの?固まって」
彼女の言葉に身体が再起動を始める。ああ、なんでねぇよと首を振る。
「いつでも笑っててね。君の笑顔は私の太陽だから」
なんてよくも恥ずかしがらずに言えるもんだ。そんなセリフ言われたことなくて思わず顔と胸の中に炎が灯った。



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