ピントが合わない3Dメガネ


チリチリと火の粉が飛びながら、相手の船が沈むのを眺めていると、隣に人の気配がした。
彼女は何も言わずにただ、敵船が燃えて沈みゆくのを眺めていた。また、お昼過ぎころ。今から昼寝でもするかと横になろうとしたら大砲の音がして飛び起きた。相手が打つ大砲の球を磁気で逆行させて自分の弾で自分の船が打たれていくのを爽快だと笑いながら沈めた。
彼女は隣に来ても何も言わないから横目で見たが、こちらの視線に気づいているのか、気にしてないのか目線を動かすことはなかった。なんだよと目線を俺も前に戻した
「沈んでいく、夕陽に似てる」
彼女の発言に横目を隣に戻す。俺の視線に気づいてはいたようだが、気にしてなかったようだ。
俺の目線に気づいているのに、その一言から何も話さない。
「どういうことだ」
振ってやるべきかと声をかければ、チラリとこちらを向いた。
「そのまんま。沈んでいく夕陽みたいだなって」
「どこがだよ」
「燃えてる感じ」
何言ってんのか、さっぱりわからん。よくわからないから敵船を見つめるけど、やっぱりよくわからなくて首を傾げる。隣から小さな笑い声がしてそちらを見れば今度はきちんと目があった。
「わからないよね。私の感覚の話だから」
昔から海が青いとか、空が低いとか冬島だから影が青いとかよくわかんねえことを言ってた。キラーはその変な発言に耳を傾けて返事をしてやっては会話を続けていたが、俺にはよくわからなかった。
「夕陽って、なにか燃えてる気がするんだよね」
だから、それどういうことだよ。夕陽が燃えてるわけねえのに楽しそうに話す。ロマンチストなわけでないこいつが、情緒なことになると途端によくわからないから単語を出してくる。面白い時もあるが、よくわからないことの方が多かった。
「キッドくんはさ、景色とかを見て、ああ似てるなって思ったことないの?」
こいつの質問に頭を回転させるが、特にない。
「ないよね、君だもん」
「失礼だろ」
ほんとのことじゃんと笑うから特に言い返すこともなくて黙る。
「水平線さえも燃やしてるように見えるから、似てるなって思ったんだよ」
だから、どういうことだよ。やっぱりよくわからなくて敵船にもう一度目を向ける。パチパチと火の粉が飛ぶ音が小さくなっていき、火の海も消え始めた。いつもの海が戻っていく。
「焼いてるように見えたから、焦げ跡のような匂いがぴったりだと思ったの」
鼻を吸っても焦げ跡の匂いはもう届かなくて、首を傾げた。俺の行動が面白いのか楽しそうに笑うから、ちょっと睨んでやれば、ふふと柔らかく笑う
「なんだよ」
「なんでもない」
そのくせ楽しそうに微笑んだまま消えてしまった夕陽を眺めているから、ため息ついて海を見た。火が飛んでいた海は元に戻りなにももなかったかのような海が広がる。磁気で作った腕をみて、そろそろ部品替えだなと思った時、俺の腕を注視するから首を傾げた
「キッド君は鉄の匂いがする。茶色のサビみたいな。しょっぱい感じ」
またよくわかんねぇこと言い始める。なんだそりゃと呟いてやれば楽しそうに笑った
「鉄潮っていうのかなぁ。ねぇ、舐めてみていい?」
何言ってんだとちょっと引けば、くすくすと笑ってきやがる。ちょっと腹が立ったから磁気の腕でこいつの腰を寄せて俺がこいつのことを舐めてやればなんとなく甘い気がして。
「お前は、チェリーみたいな味がする」
固まってたこいつが夕陽みたいな顔色になっていくのをみて、燃えてる感じというのがなんとなくわかった気がした。



HOME┃top prevnext戻る