*男主
麦わらが俺の国にログをとりにきて1日がたった。たった1日で国が傾くなんて誰が予想できるんだろう。
「おい!お前が、行けよ!」
美形しかいないと騒いでいた黒足は今じゃ目の色を変えて怒っている。男も女も美形でスタイルのいいやつじゃないと住めない。ここはモデルの国。聞こえはいいけど、生まれ持った容姿で外か内か生きていく場所が決まる。生まれたすぐは町外れの国営の施設で世話になり一才になる頃に決まる。親がいいからいい顔な奴もいるし、そうじゃない奴だっている。障害者は最下層として死にながら国の掃除に努めてる。
麦わらは普通の顔立ちだったが、観光客だから特に言われない。でも、航海士とニコ・ロビンはいい顔とスタイルだから国から声がかかってた。黒足や海賊狩りもかけられてるのを見た。というよりも、それをするのが俺の仕事だった。
顔が良くないと金をもらえない、働き口がないから。顔の良さで仕事の内容だって決まる。所詮顔採用。中身を見て欲しかったらいい顔で生まれて、それを維持する肌ケアとボディメンテがいる。でも、それをするにも金がかかる。良いよりの顔なら働けば整形くらいできる。でも、それをするのも精一杯な職種は永遠に底だ。
いつ都落させられるか。望まない人と結婚して子供を産まされ精子を搾り取られるのは見えない圧迫があって苦しかった。
俺は親の顔を知っていた。でも、友人は知らなかった。
「おれは、ただの一般社員だ」
「でも、お前が怒ったんだろ!!」
どっかで爆発する音を聞きながら、急に白くなった麦わらが俺に怒る。美形の遺伝と人材を確保するために、褒めて騙して一生奴隷にする。強張る顔を見るのは、もう嫌だった。
なにかしらの実の能力で逃げることができない国。外の世界なんて知らない。知らせる本すらない。おかしいと気づくのはおれだけ。こんな仕事してからだ。
また爆発音がする。傷だらけで血が流れる麦わらはへこたれる俺の方を強く握り揺らす。俺だって、逃げたいよ。美形でなちゃいけないなんて、良いことだけど。それだけが全てじゃないだろ。見惚れる老人にならなければ、良い顔の子供を産まなければ、産んだ子供にも会えないなんて、そんなこと、あっていいもんか。親が、年老いたからって殺されて良いもんか。
「でも、王がいなくなった後、おれは、背負えない」
「なに言ってんだ!!背負えよ!お前が言い出したんだろ!」
世界政府の国だ。天竜人にも妻として娼婦として人を貢ぐこの国。俺の、大切な妹を返せ。家族を返せよと怒ったら、麦わらが大きく笑って、任せろと飛んで行った。
「俺が、王になれるわけないだろ!」
「じゃあ、誰がなるんだ!!お前だけなんだろ、王の洗脳がきかねぇの!」
感情を操る能力は俺だけ洗脳をさせてくれなかった。なぜだ、洗脳してたらこうはならなかった。
「決めるのは今じゃないわよ!ルフィが手を出したんだから、あんたがやるのは、国民の目を覚ますことでしょ!!」
航海士が変な棒を操りながら俺に声をかける。ハッと見れば王子様と目が合う。この国が手作り理由。王が見惚れない老人と決まった時、王位継承が行われる。それが、まさか、食べて能力の継承なんて。危うく親を食わされるところだった王子様は俺の能力で洗脳が解けた。真っ青だった顔は真っ赤になって使えない騎士の代わりに麦わらたちに懇願してる。
「俺だけじゃ、無理だ。どうやって解くんだ」
「解けないなら、解かすしかないだろ!!やれよ!お前の怒りだろ!」
やれるんだったら、もうとっくにやってる。ルイは俺を担ぎ殿下が操る洗脳された騎士やメイドたちを使って攻撃してくる。
「殿下を食わせないミッションはコンプリートしたんだ!あとは、王を倒すだけだ!!」
海賊狩りが叫ぶ。俺には無理だ。殴れない。殴り方も知らないんだ。それがどうしても悔しくて涙が溜まる。麦わらが俺の肩を掴みながら見つめる。
「俺じゃ、無理だ。俺は人1人殴れない。拳の作り方も知らない、喧嘩だってしたことないんだ。しないように、なってるから」
意見が違うことはなかった。すべて上が決めることだから。上に言われたことをやる。みんなそうやってエスカレーターで登るみたいな人生を歩む。
拳すら作れない俺はこの悔しさをどうしたらいいのかわからない。馴染むために、俺だけが俺でいてもしょうがないから自分で自分の能力をかけた。麦わらの太陽みたいな笑顔を見るまでは。
「拳なら、俺が教えてやる!」
麦わらを見上げる。まっすぐな目だ。
「道は俺たちで作る!お前は、俺の作った拳でただ、その怒りのまま頬に当てろ!」
麦わらは掴んでいた手を離して、俺の右手を取り親指を手のひらに収め、4本の指を折り包むようにして、拳を作った。
「これがお前の、拳だ」
覚えておけ。そう呟くと、どういうわけか大きくなった殿下に向かって腕を伸ばし飛んだ。背中に腕を伸ばして伸ばして、黒くして炎を灯す。
「ゴムゴムのォ業火拳銃!!!」
叫んだ先で燃えた拳が殿下に当たって巨大化を助けてた霧が晴れる。消えた霧の中からは殿下が出てきて、宙で落ちている最中だった。
「いくぞ!!」
「舌、噛むなよ」
海賊狩りが刀をしまい、俺を担ぐ。驚いて思わず拳を強く握る。抱えたまま海賊狩りは黒足の筋に乗って勢いよく蹴り出される
「空軍・パワーシュート!」
弾き飛ばされた勢いで飛び、思わずその威力に目を瞑った。その時、海賊狩りは俺を槍投げをするように投げ飛ばした。驚きが重なり手のひらを開いて風を塞ごうと手を伸ばした時。
「にぎれ!!つよく!!」
目の前を飛ぶ白い麦わらが声をかける。開きかけた拳を強く握り、殿下に向かって降ろす。
「うわぁぁぁ!!」
どうやって殴るかわからないから、勢いに任せて声を上げる。あげたことない大声だ。
地に落とされ殿下。落ちる俺を人型になった鹿が受け止めてくれた。
目が覚めるような騎士たちやメイドたち。王子様が事の顛末と事実を話す。震える拳はなかなか開いてくれなくて、左手で震えを抑えるように握った。大きな笑い声がして空を見れば、白い麦わら。曇天から光が差しはじめた。腰が抜けて立てそうにない。初めて握った拳と殴った感触。ふと、地面を見れば麦わらが飛んだ時に反発でついた草履跡。ニッシシと笑う声が空を翔けた。