急転直下の逢引き現場


ニジかヨジのどっちかの攻撃音が轟き、残響がこだましていた。大したことなかったなとたった今滅ぼした国を見てため息一つでない。カランと音がして振り返れば、俺たちに依頼してきた側の制服を着込んだ女。
「依頼遂行、感謝します。こちら、報酬額揃えております」
黒い皮の鞄を肩から下ろして俺に渡してくる。待てよ、こいついつから居た。
グレーの軍服に身を包んだ女は何食わぬ顔でこちらを見ている。気配を感じなかったが、たった今終わったばかりの戦場に居られるということはなんらかの能力者であるだろう。能力者がいるならば勝手に勝てばいいものを俺たちに頼むということは、強くはない力ということか。俺の周辺感知レーダーにも引っ掛からず、のうのうと姿を現した。マントもせずに自国の軍服を着ていられるあたりなにか特殊なのかもしれない。
「何者だ」
俺の問いかけに首を傾げる
「依頼した国の従者です」
その通りなんだろうが、そういうことじゃない。どうやったら凡人に伝わるか頭を回転させていたら
「ああ、姿を消すことができます。指先一本でも動かしたらアウトですが」
自分で教えてくれた。わかっているなら先に言え。ステルスになれるということか。だが、その分のデメリットもある。
「監査役にはちょうどいいな」
「いえ、あ、まあ。監視してたわけじゃないですけどね。終わりそうだと連絡が入ったものですから、私が届けにあがったまでです」
淡々と告げる。重たそうにしてる金が入った鞄を受け取って欲しそうにしている。
「こんな弱小国。自分たちで倒せただろう」
「我が国にとっては弱小ではありませんでしたから」
「フン、弱い国は苦労するな」
「平和なんですよ」
減らず口が。いい度胸してやがる。
「金さえ用意していれば、いくらでも助けてやる」
「そちらに滅ぼされないことを祈るまでです」
「平和でいろよ」
鼻で笑ってやればちょっと意外そうな顔。なんだよとあまり上がらない口角を元に戻す。女はまた興味なさそうな顔で鞄を持ち直す
「ジェルマ66が平和を望んでくれるとは思いませんでした」
だろうな。別に望んで言ったわけじゃない。どちらかと言うと嫌味で言った。それもわかってそうだから、ますます面白い。
軍服を着ているにしては綺麗な身なりだ。戦闘には関わってないのか。それともずっとステルスしているのか。腕を組んでサングラス越しで見つめる。女は自然に気づいたのか俺のことをじっと見つめて眉を顰める
「このあとは、勝利のパレードか」
「そのようなことをして暇とお金がありませんが、まあ、しないと国民にも伝わりませんし。なによりら活気が戻りませんから」
人間というのは大変だな。クローンであることを知らないジェルマの国民は少し便利だ。金がないとはな、俺たちのせいってか
「勝ったんだからいいだろ」
「いいですよ、勝ったんですから」
「お前もパレードに出演するのか」
「しませんよ、従者に戻ってのんびりと暮らすだけです」
「軍人ではないんだな」
「従者ですから。能力者であろうと変わりませんよ」
痺れを切らしたのか、俺の方に鞄を押し付けてきたから、反射的にそれを受け取る。
渡したからと一礼してすぐ帰ろうとする腰を捕まえて担ぐように持ち上げる。顔は見えないが、焦っているのが伝わってくる。狼狽えている声を無視すればニジたちと合流した。シューズで空を飛べば、うわぁ!と一瞬叫んでから落ちないと俺にしがみついてきた。
「なんだぁ、イチジ。その女は」
ヨジの問いかけに女も気にしてるのか姿勢を直して俺をみる
「戦利品だ。ステルス使い」
悪魔の実の能力についての研究はあまりしてこなかったな。こいつのサンプルから得られるものがあるかもしれない。許可も取ってない俺に女は固まり俺を見つめる。おいおい、そんなに見つめたら穴が開くだろ。
鼻で笑ってやれば、とてつもなく嫌そうに眉を顰める。いい態度だ。可愛がってやる



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