君に向ける指先の銃口


人獣型から変身を解いてズレたマスクを指先で治す。光る爪がなくなった指先を見る。
「ご無沙汰してます」
久しぶりに聞いた声で顔を向ければ、白い白衣を纏い、革手袋をはめてる左手でバインダーを少し指だけで持ち直した。
「お元気でしたか?」
まあ、それなりにと答えてやれば柔らかく微笑む。
「うるティも、元気ですか?」
「ああ。姉貴はピンピンしてるぞ」
科学班の彼女は今日もクイーンにこき使われてるらしい。別にコイツじゃなくても、もっと雑魚な奴らが採血とか、健康診断をするべきなのにコイツが担当してる。
この前は、ジョーカーに挨拶に行って留守にしてた。行ったと聞いてから3ヶ月は過ぎてるから全く会ってない。少しの間に身体をまたいじったのだろうか。それとも、いじってて会えなかったとか。チラリと見れば少し身体に違和感。どこをいじった?
「お元気そうで、ならよりです。というのも、先ほどうるティの健康診断が結びまして。血を抜いたのですが、どうも刺した場所が悪かったみたいで。新人にはよくあることです。まあ、彼女は許さなかったようですが」
血汁が飛び散る前に割って入りましたが、新人は当分使えないでしょうね。なんて相変わらず、告げる言葉は辛辣だ。
革手袋をはめた左手に視線がいく。カイドウさんに禁酒を言い渡せるのはコイツくらいだ。聞かないだろうけどな、あの人。酒を飲む為に生まれたようなもんだ。酒をそばに置いてない時はいつだって彼女がいて、何してんだと少し体をずらせば血圧測ってたりする。採血はアホみたいなぶっとい針ので刺してる。人獣型は諦めたみたいだ。
そんなんだからクイーンは彼女に面倒ことを押し付けるんだろうな。それをこなす効率厨だからまた引き寄せるんだろう。姉貴の相手をしてる時もそうだが、変な語尾だろうとなんだろうと可愛いと相手するのはブラックマリアかコイツくらいだ。気にせず上司の相手をするのが得意か。歳は知らないけど、俺ら以外には敬語が多いからきっと俺よりは年上。でも、そんなに変わらないはず。
「また、ドレスローザいくのか?」
特に気にしてないことを呟けば、首を傾げる。
「ドレスローザになにか?」
「いや、特にねぇよ。行くのかなって」
行かないんですよね。ちょっと楽しそう。ジョーカーと何かあったか。王下七武海の1人だ。いくら四皇の部下とは言え、俺だって勝てる見込みはない。クイーンやキングたちはいけるんだろうな。デカいし、強いし、態度悪いけど。
「また、診断結果お渡しします」
バインダーを持ち直した義手が音を立てる。もう行っちまうのか。久しぶりの会話だってのに。特に話すこともないけど終わってしまったことに少し胸が空く。コイツの遠い後ろから姉貴が向かってきてるのが見えて、少しため息。見てないくせに笑うから首を傾げる。見聞か?
「では、また」
あとで、がないから手を振る。振り返された手を見て、横顔を見る。背けられる瞬間わかった。そうか、目を変えたのか。精密すぎて気が付かなかった。自前の目が見えずらいと言っていたな。生まれつきの障害だった気がする。いや、どうだっけ。乱視とか斜視とか言ってた気がする。なんだっけと唸っていたから、目の前にまで来てた姉貴に体当たりされる準備ができてなくて、さっき採血とばかりに吸われた脊髄が床に軋んだ。



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