プレゼントが2つ
電車に揺られて海が見えなくなった。そのかわり空にはキラキラと星が碧々と輝いていた。
「綺麗だねぇ」
安定の街ではあるが、やはり少しくらいはと。明日が本番の町も、ここぞとばかりに道路際の街路樹に青と白のイルミネーションを巻きつけて気を光らせていた。
「プレゼント、なににしようかなぁ」
「あー、どーしようね」
なんとなく、志恩の顔をみて
「なにが欲しい?」
そう聞けば、なんとも言えないへったくそな笑みをして
「サンタさん」
と言った。
たった数秒の間は私にとっては大きな間だった。
「じゃあね」
といって別れた彼女。
私は知っている。サンタさんが欲しいなんて思ってない。なにかを与えてくれる人が欲しいのだ。なにか。それも知っているでもあげることはできない。
習い事が一緒で小学校からずっと一緒にいる彼女。
全ては知らないけど知ってることもある。
彼女は、与えてくる人が欲しいのだ。そう。
彼女は、愛を知らない。
志恩には、姉がいた。そう、いたのだ。亡くなってしまった。病気で。
突発性だったらしい。難病のそれを治すことは今の医学にはない。
志恩は姉の悲しみとともに親からの半分の愛を抱え込んだ。
姉につきっきりになった母親。仕事を遅くまでして姉の手術代を稼ぐ父。ほっとかれたわけではないことくらい彼女は理解していた。それでも、彼女がまだ幼かった。小学校低学年の彼女からすれば家に誰もいないことが当たり前だった。
共働きの私とも違う親のいない形。
夜と土日会える嬉しさがある私といつ会えるかわからない不安を持つ彼女。
愛を知らないわけではないが、愛を知らないのだ。
姉の悲しみから立ち直ったとき。母は仕事に復帰し、父は普段通りの仕事をした。
しかし、それは彼女も大人になることを表す。
彼女が中学になった時。親が立ち直った時。一人でできるようになった13歳を大人扱いした。
「お困りで?」
サンタコスをしたお姉さんに話しかけられる。お姉さんのそばには白い箱が数箱。
ケーキ売りのアルバイト?
「い、いえ。その」
「ケーキを食べるといいよ」
そう言って私に向かってその白い箱を渡してきた。
「え、いや。だ、大丈夫です」
宙に浮いた箱。
「いいから。きっといいことが起こるよ」
「その子にね」
そう言って私に渡してきた。
「え」
「疲れた時はあまーいのを食べるべきだよ」
ね。と言って笑う。
箱を見て顔を上げた瞬間。街は違ったイルミネーションを見せた。まるで、夢の国のようなキラキラと様々な色と暖かな光。同じ街のはずなのに。
「君の悩みはきっと、すぐに解決するよ」
「え、ど、どういう」
よくわからずに聴くとその人は微笑んだ。
「とりあえず」
そう言うと私の目の前に両手を差し出して
「メリー・・」
「クリスマス!」
と言って手を叩いた驚いて目を閉じた。恐る恐る開けると
「あれ?」
いつも通りの町並みとサンタさんはいなくなっていた。代わりにサンタの置物があった。
夢かと思うが、手には白い箱を持っていた。あれはなんだったんだ?ワンピース姿の可愛らしいサンタコスをきたお姉さん。
明日のためにとみんながプレゼントを渡している。恋人。友達。家族。私はあの子に何をあげられるだろう。何をあげよう。
プレゼントを選ぶために私は帰路を変えて、お店やさんを探すために踵を返した。
20260707
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