プレゼントが3つ
志恩とは割りと一緒にいる時間が多い。
ひとりっ子の私は、親の帰宅を志恩と待っていた。志恩も1人が嫌だったのだ。だから、誰もいない家ではなく私の家に来ていた。
よく夕飯を食べて帰っていた。次の日がお休みだとお風呂も一緒に入ってそのまま泊まることが多かった。だから、私は金曜日が好きだった。
「海に行こう」
そう言いだしたのは、確か。お互いが中学生になった時。電車賃を握って初めて降りる駅は新鮮で、普段見ていた山が消える。そんな不思議な感覚に縛られながら海沿いを2人で歩いた。
そこで聞かされた。お姉さんに対する思いに親に対する想い。私はそこで、志恩とは違うんだなと感じた。すごくかわいそうとは思わなかったが、せめて、友達としてそばにいれたならいいなと思った。
初めて嗅いだ潮の香りは私にとって別世界の入り口の香りとなった。
志恩が私のことをどう思っているかはよく知らないが、私が志恩のことが好きなことくらいはわかってくれてると思う。
ぽちぽちとショッピングモールを目指して歩いてたどり着いた。ショッピングモール内には大きなツリーが飾られていて圧倒された。
さて、あの子には何を渡そうか。有名なクリスマスソングが永遠と流れては途中に入るクリスマスの押し売りの放送。モールは混み合っていて歩くのがしんどくなった。
モールを一周して、自分が知りうる彼女の好きなお店や物をみてみたがどれもこれじゃない気がした。
友人として彼女にしてあげられることなんて限りがある。
ふと、右手にぶら下げる白い箱に目がいく。この中のケーキはどんなものだろう。そう思うと無性に中が見たくなった。
フードコートで空いてる席で箱を開ける。
そういえば、昔はクリスマスを一緒に過ごしていたな。彼女と一緒にお肉を食べて、ケーキを食べて一緒に寝たりしていた。その時のプレゼントは彼女の親から私の親に渡され母か父かのどちらかが置いていた。
それが欲しかったものだったかのは知らないが、彼女と一緒にもらったものの見せ合いをしていた。
子供はなんでも欲しいものだ。大人になった私たちはなにが欲しいだろう。おもちゃはいらない。服とか化粧品とか欲しい。欲しいが彼女に渡すのはそれじゃない気がした。
慎重に白い箱を開けて中のプラスチックの中敷を引っ張る。見えたのは白いクリームを纏っているホールケーキ。砂糖菓子で出来たサンタに真っ赤な苺たち。マシュマロのような柔らかいクリーム。メリークリスマスと筆記体で書いてあるチョコレートとクッキーで出来た小さな家。甘い匂いが鼻をくすぐった。
私はこのケーキをどこかで見たことがある。さて、どこだったろうか。でも、このケーキに乗っている飾りを誰かと取り合うかのように楽しく食べた記憶がある。きっと志恩だと思うが、その志恩がどうも引っかかる。
その時の志恩は楽しんでいたはずだ。でも、なんだか違う気がする。
ペロリとなんとなく側面に塗られているクリームを指にすくって舐めた。
なんとも甘い味が口に広がる。クリーム独特の牛乳を捨てることなく全てを使っている。うまい。
そういえば、志恩はショートケーキが大好きだったな。私はタルトの方が好きだけど。
そこで思い出した。志恩に苺をあげていた人がいたはずだ。私の親じゃない。志恩の親か?誰だったろうか。
その時のことをしっかりと思い出すことができればなぜかスッキリするような気がした。
その時、リンと鈴の音が聞こえた気がした。
20260707
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