第2話
葉桜になってきた頃。昨日の大雨で残りの桜は散ってしまうのだろうと思っていたが、通学路にある桜並木にまだ桜がちらほらついていたので少し嬉しかった。
「おはよう」
「おお。おはよー」
机に荷物を置いて紗那のもとに向かう。
「あ、イケメンくんだ」
最近のお気に入りは、背が高い鼻が高い脚が長いどっかのクラスの男の子に夢中だ。
確かにイケメンだと思うし、紗那の好きな顔をしているなと思う。
スーツを着ている男性が好きだと言っていた彼女にはきっと、ブレザー姿はとても光栄に近いことだ。
私だってもうすこし背が高くてスラリとした脚を持っていたらきっと、パンツスーツが似合うと思う。まあ、そんなの誰だって似合うかもだけど。
「あの、シャツを腕まくりしてるのがいいよね」
「あー、わかる」
女子はスーツ姿の男性には惹かれやすいと聞いたことはあるし、自分だって別に嫌いじゃない。どちらかといえばカッコイイと思う。
「そういえばさ、この前言ってた俳優が出てるドラマあるじゃない?」
「あー、ごめん。見てないわ」
「好きな俳優なのに?」
「好きだけど、ドラマは見ないよ。あんまり」
好きだからこそ見るんじゃないのか?と思い聞いてみると
「いや。別に恋愛とか興味ないから」
紗那のその言葉に心がズシリとした。
「でも、ああいう設定には憧れるよね」
今回のドラマは、お嬢様とそれを守るSPの話だ。
「お嬢」
なにもわからないお嬢が椅子に不安そうに座る。
お嬢に跪いて手をさしのばす
「紗那お嬢。私がいます」
不安げな瞳が水で揺れている。
白い手袋をはめた私の手をずっと見つめる彼女に微笑み
「お嬢。守ります」
そう言えば私の顔をしっかりと見て瞳に私がくっきりと浮かび可愛らしい頬に一筋の涙が垂れる。
「守ります。あなたが泣かないように」
だからと言おうとした瞬間。
お嬢が私の首に腕を回した。小さな華奢な肩を包み頭を撫でる。
「安心するのに、悔しいのよ」
お嬢のその言葉の意味はわかっていたがわからないフリをして苦笑いで返した。
顔を向きあいまだ流れる涙を掬い、お嬢。と一声をかける。
長い睫毛がキラキラと次の光を浴びて輝いている。そのまま下の方に指を滑らせシャープな顎に指をかける。それだけで照れてしまうのだから可愛いものだと笑い。顎から手を離して華奢な体を包んで、
「いやぁ。カッコいいよねー」
紗那の言葉にふと意識を戻して、目線を辿れば噂の彼。
相変わらず教室で、彼女の前の席だし。私は手袋をはめてなければスーツでもない。紗那は不安な瞳はなくキラキラと別の意味で輝いてる。
「人気だよね」
「まぁね。イケメンだからね」
「取られるかもよ」
とふざけて言えば
「別に、付き合いたいわけじゃないからいいよ。興味ないし」
告白してきたら別だけど。と言った彼女に複雑な気持ちを抱えながら
「そうだね」
と返した。
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