第3話
陽があると暖かいのに風は冷たく日陰に入ると鳥肌が立つ。
「春って、あっという間だよね」
紗那は私の言葉を聞いてスマホから顔を上げた。
「鳴衣。それはまだ早いぞ」
え?と思い彼女を見れば楽しそうに笑っている。
「なに?」
「ふふふ。春が来たのだよ」
「なにが」
そう言った私に彼女は嬉しそうにスマホをいじり写真を見せて来た
「え」
「お先だ」
そこに写っていたいのは、知らない男の子。
「彼氏?」
「そうだよ」
ズシンと重くなった。ああ。高一の時にはできてなかったから安心していたのにここでできるのか。
心なしか今日は機嫌がいいなとか。なんか可愛いなって思っていたけど。まさか、こうなるとは思ってなかった。
「まあ、いつまで続くかだよねー」
のんびりという彼女に、すぐに別れちまえと心の中の闇がそう呟いた。
「告白は、どっちから?」
「むこうから」
「なんで、オッケーしたの?」
聞いた私がバカだったと思う。
「イケメンだから」
普通だと思うが、彼女がイケメンだと思えば周りがどう言おうとどうでもいいのだ。王道のイケメンが好きだが、雰囲気イケメンも彼女の中では問題ないのだ。
「よかったやん」
心が油を失ったブリキのようにギシギシ鳴る
「おめでとう」
ギシギシと音を立てるその言葉は彼女には普通にしか聞こえないのだろうか。
油をささないとやがて動かなくなってしまう心を持つ私に彼女はいつも涙の油をくれた。
しかし、彼女はいつしか油を指すことを溢れてしまった。
心がギシギシと音がなり、忘れた去られた私は自分で心を満たそうと涙を流した。油の涙は自身の油を垂れ流すだけで心は錆びて行くばかりだった。
「まあ・・」
忘れてたと言わんばかりの彼女の顔を見て
「やっと来てくれたね」
と微笑む私に抱きついて、大粒の命の涙を流したが遅すぎた。
「ごめんね。ごめんね」
「いいの。今までありがとう」
動かない手は彼女を包むことすらできない。悔やんだままの彼女に私はなにができるのだろうか。
彼女は私から少し離れて、私の死にそうな顔を見てまた泣く。
これで最後と動かない手を彼女の頬に添えば彼女は冷たい私の手にすり寄った。温かいその柔らかな頬に流れる涙を始めてもらった時の記憶が蘇る。
「あー・・・綺麗だなぁ」
私の言葉に彼女はもっと泣いた。そして私の頬に温かい手を添えて私の青紫になった錆びれた唇に指を這う。そして、最後に私の唇に・・
「鳴衣もできるといいね」
彼女の楽しそうな顔を見る。
「ダブルデートとかしてみたいからさ」
未来を楽しむ彼女に涙はない。
「そうだね」
楽しそうな顔で心を傷めることはたまにあったが。ギシギシと鳴るのは初めてで、
デートの話とか少し先の話とか、とても楽しそうに話す相手も瞳に写っているのも、私がよかったとギシギシなる微笑みで返した。
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