第5話
雨が朝からすごい勢いで降っていた。
ジメッとしてるかと思ったが、わりと肌寒かった。
「おはよー」
「おはよ」
「雨やばいわ」
「それな」
彼女はカバンの中からタオルを取り出して雨に濡れた服やカバンを拭いた。
「きいて」
でた。私がなんとも言えない気分になる言葉。
「なに?」
「昨日も雨だったじゃない?彼とね相合傘したの」
「傘持ってなかったの?」
「かれ?そう、そこなんだよ」
ふっふっふっ。とわざとらしく笑った彼女は可愛いが、嫌な予感がした。
「帰りに降ったからさ。忘れたんだって。でもね。駅に着いた時にさ。本当は持ってたんだけど、一緒に入りたかったんだって!照れながら言ったんだよ!」
こんなに興奮して言う彼女は珍しい。
楽しそうに可愛く熱狂するかのような彼女を見てて微笑ましいのに内容がムカつく。
なんだ、一緒にって。キザか。寒気がする。でも、イケメンな彼からそう言われたら彼女はたまらないんだろうな。
「じゃあね」
「うん」
学校から駅までの道のりは、いつも通りの道で。ただ、水飛沫がいつもより多く。電車のブレーキもいつもより大きな亀裂音を出していた。
「電車まで、まだ時間があったわ」
「まじか」
改札前で2人で会話をしていた。
2人で狭い傘に無理やり入ってたから、彼女の肩はずぶ濡れで
「肩、めちゃ濡れちゃったね」
ごめんね。と言えば彼女は
「ん?ああ。いいよ」
と自分の肩を見てのんびり言った。
たわいのない話はさっきまでずっと朝からしてたのに。学校でも一緒にいたのにこうも話が尽きないのはどうしてだろう。楽しくてなんでも話してしまう。楽しい話も面白いことも嫌な事もなんでも。
「あ、もう電車くる」
「まじか」
ふと電光掲示板をみれば、電車の時間。
「じゃあ、また」
「うん」
先ほどと同じ言葉を言えば同じ言葉が返ってくる。
改札を通る前に、彼女に向かって
「本当はさ」
「ん?」
と言えば私を見た
「傘、持ってきてたんだ」
「一緒に入りたかったから、うそ、つたの」
と言えばなんだかこっちが恥ずかしくなって早口で、じゃあね。と言って改札を通った。
彼女は、え。と一瞬固まって顔を赤くした。両手で赤くなった頬を抑えて
「え、いや、うそでしょ」
と言って混乱した。彼女はそのままその場にしゃがみ込んで顔を覆う。
「それじゃあ、まるで。勘違いしちゃうじゃない」
なんて、ことを言って、
「言ったんだよ」
彼女の嬉しそうな顔は赤くはなくにやにやとしてて、頬を抑えることなくしゃがみ込むこともなく。ふつうに私の前の席にお邪魔していた。
「でも、夢だよね。そういうこと言われるのは」
「だよねー」
「よかったやん」
「まあね」
と嬉しそうな彼女。
みろ。私の言葉の方が嬉しそうだぞ。とこの場にいない彼氏さんに勝ち誇ってみる。
「いやぁ、イケメンだからね。なにしてもカッコいいよ」
「そだね」
くそ、イケメンって。イケメンだから否定はできないけど。できないけど。
頭の中をこんがらせて一旦ため息をついた。なにしてんだろ。あほくさ。
だから彼女の惚気は嫌なんだ。なんとも言えない胸騒ぎを起こすから。
私の悩みなんて梅雨ほど知らない彼女はのんびりと彼氏さんの話を進める。
はあ。と大きくため息を着けば、どうしたの?ときいてくる彼女。首をコテンとする彼女は可愛い。なんでもないよ、寝不足なのと言えば寝る時の話に変わった。
それだけが、心の救いだった。
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