馬鹿じゃねえの?と真顔で言う私に静かにしろ、と降谷さんは答えた。
カチャリ、慣れない手つきで震えながらもセーフティを解除した音に私は思わず盛大なため息を吐いた。
事の発端は少し遠い杯戸町に用事があり、カフェで人を待っていたのだが、そこで一人の男が突然大声を上げた後に銃を客に向けた。撃ちはしないものの、ずっと何かを叫んでる。意味が分からん。なんじゃこれ。
男は忙しなく口を動かしているが、咳が離れている私たちには全くわからない。あ、私たちとは降谷さんと私ね。
ちなみに降谷さんは偶然外で出会って何故か一緒に中へと入ってきた。今更だけど、この人偶然装っていつもここら近辺で会うんだけど。私がいれば降谷さんホイホイにでもなれるのかな?なりたくないけれど。
「こっちに来る」
「おいそこの女、俺の所まで来い!」
銃口を向けられまさかのご指名に目眩が襲ってくる。銃口を向ければ怯えるとでも思ってるのか?なんなんこいつ?
なんて思いながらも取り敢えず従うか、とコーヒーを一口飲んで立ち上がろうとすれば男が早くしろ、と急かしてきた。
本当になんなんだよこいつ。
カツカツ、いつものヒール音を鳴らして男の方へと歩いていく。降谷さんが小さな声で制止したが、それを聞こえないふりをして男の元へと歩いていくと、男の目は血走っている。呼吸は荒く、額からは汗が吹き出していた。
「ここにいるヤツらの財布全部持ってこい」
これは、素直に従うべきか。
了解、と小さく吐き出して横の席で小さく震えながら縮こまっている女性客のバッグを、 すみませんね 、と謝りながら拝借する。
中々いいバッグじゃないですか。B5サイズのエメラルドグリーン、四隅にはゴールドの装飾。なんて可愛らしいバッグなのだろうか。
「とても可愛らしいバッグですね」
「え、あ、」
「早くしろ!」
可愛いバッグ。お値段はいくら位かな?
男が銃を私に向けたまま急かす。
どうしたってヤクをキメてる人間は禁断症状に入ると予想ここまでせっかちになるんだろう。大体金無いくせにヤクなんてすんなよ。
イライラしつつもチラリと男を見れば貧乏揺すりの如く揺れ出した。
「お財布見当たらないので、確認してもらっても?」
「チッ…よこ、」
勢い良くバッグを男の顔に目がけて振り回す。なるべく装飾部分をぶつける気持ちで。そうすると、気持ちが良くなるくらいの打撲音と共に床へと頭を打ち付けた。手から銃は離れてしまう程に、この装飾は強いらしい。
男から離れた銃をすぐさま手に取り今度は私が男へと銃口を向けた。男は変わらず息が荒い。
「さて、次は私の番だね?君はどこでヤクを流してもらったのかな?」
「てめぇ、マトリか!」
「違うよバーカ」
トリガーを躊躇無く引いた。