03

モニターへと映される映像を見ながらお茶をすすす、と鳴らしながら喉を潤した。
画面の中で彼は笑顔でケーキを振舞っている。これは確か半熟ケーキとかいうやつだったか? 以前彼が食べてみません?と言っていたやつだ。勿論断ったけれど、どうやらこの半熟ケーキは人気のケーキらしく、食べてる人間が多い。


「何してるの」

「ポアロ観察」

「ふーん……降谷零か」


突然現れた恭弥が私の背後からマウスを触って、安室さんの所はカーソルを合わせてクリックした。 すると安室さんが拡大された映像に、私は 何? と言葉を返す。恭弥は口角を少しだけ上げて笑った。
恭弥は意外と降谷さんを気に入っている。本当に珍しく降谷さんに興味を抱いているからこそ、財団と外部との関わりを良しとした。勿論警察との関係なんて、一時は監査対象だったから、私達としては大反対だったのだけど、彼が許可を出したのだ。勿論警察と協力をする上でも、多少の乱闘に関しては目を瞑ってもらうことを条件にだが。その点については、財団としても動きやすくなる。ただ、デメリットは警察と関係があることを悟られてはならないことだ。こちらが警察との関係があると知られるとナメてかかってくる奴らが増えるからだ。ボンゴレ達(特にリボーン君)からすれば良いコネクションだ、と褒められたが。
それにしたって、降谷さんは私をハニートラップとしてなのか、素直になのか、分からないが好きだと言ってくるし、正直今いいことはない。それなのに、


「彼、もうすぐバイト終わるんだろ?」

「……らしいね」


じゃあ行こうか。そう言って彼は愛車のキーを手に取った。







「やあ、待ってたよ」

「お疲れ様でした」

「…珍しいお出迎えですね」

彼の愛車であるRX-7の隣に停めた車内から挨拶をすれば降谷さんも不思議な顔をして返してくれた。恭弥は変わらず少し口角を上げたまま降谷さんの方を見ている。降谷さんもまた、不思議そうな顔のまま恭弥を見つめる。私はといえば場違いな気がしたまま愛用の加熱式たばこを控えめに吸っていた。昔は車での喫煙は止めろと怒られていたが、加熱式たばこにしてからは言われなくなったのだ。だからこうやって、居心地が悪い時は車の窓を全開にして吸うことがある。今まさにそれ。


「久しぶりに君の顔が見たくなったんだよ」

「ホォー…君のお気に入りである犬を連れてということは、何かあるのかな?」

「まって降谷さん、私は犬なん、」

「僕の飼い犬はヤンチャだから少し見ていてもらえると有難いんだけど」

「恭弥まで…」


こいつら人を犬と言いやがった。大体なんで恭弥の気まぐれに私がついてかなきゃならないのよ。きたと思えば犬って言われて……なんだか悔しくなってきて殴られるのを覚悟で2人に向けて煙を細く長く吐き出した。一番手の恭弥には頭を思い切り叩かれ、二番手の窓の外に居た降谷さんには、 拗ねてるのか?可愛いな なんて訳のわからないことを言われてもうただただ損して終わった。


「名前が犬じゃないのであれば俺とともに来て欲しいけどな?」

「どこにですか……そもそも犬じゃないです」

「僕の犬でいいから行ってきてよ、明後日」

「あ、ごめん話聞いてなかったっぽいですもう一度」


とりあえず場所変えようか、と恭弥は降谷さんも乗せて車を発進させた。
警察が乗ってるから速度気をつけてね、と言えば、 僕は君と違って安全運転だから と言い返されてぐうの音も出なかった。わかってる、私の方が速度出しがちなのは理解してます。言わないでくれよ。
吸い終えたスティックをホルダーから取り出し灰皿へと捨てた。
さて、どこへ行くのやら。


どこへ行くかも分からぬまま、車に揺られていると昨日一昨日とゆっくりと寝る時間がなかったせいか、異様なまでに眠気が襲ってくる。車内では恭弥と降谷さんが色々話してるので、それを聞きたい気持ちは山々ではあるが、眠気の方が強くうつらうつらとし始める。
ああ、眠たい…、そう思ったその時に着信を知らせるバイブが胸ポケットの中で震えている。チラリと恭弥に視線をやると小さく頷き返ってきた。携帯を取り出しディスプレイには幸田の文字。嫌な予感がするな、とブルーのまま電話へ応答した。


「何」

《お忙しい所すみません、先日の流されてた場所が分かりました。主犯は確保し、警察へと通報も済ませてあります》

「へえ、お疲れ様。それで?」

《どうやらポモドーロファミリーが一枚噛んでる可能性があります》

「了解、じゃあ戻り次第話そうか」

《ありがとうございます。では自分たちも一度戻ります》

「休んでおきなよ、じゃまた後で」


プチ、と切ると通話終了の文字が出る。
ハアー、と溜息を吐くと二人は何かあったのか?と聞いてくるが、大したことなんてないよ、 と返して飛んで行ってしまった眠気が戻ってくる気配もないから、また私は充電済みのホルダーへスティックを差し込んだ。