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「ポモドーロファミリー……」

資料を手に取り読んでいくと、そこにはボンゴレに同盟への希望をしているイタリアのマフィア。温厚なファミリーで平和主義のボンゴレと同様の考えを持つファミリーだ。ペラ、ともう一枚の紙には財団の人間が調べたポモドーロのこと。
ポモドーロはイタリアマフィアのはずだが、どうやら裏のことは日本でもやっているらしい。態々並盛から外れた場所でだ。資料によれば、武器と爆物の横流しに加え薬物も流している。特に暴力団なんかにはとても人気のマフィアらしい。
ここ最近の活動としては先日あった、強盗事件の犯人への武器流し。


「これは大問題だ」


ポモドーロが噛んでいるとすれば、ボンゴレが同盟を組んだ場合に襲撃される可能性が高い。そうなれば必然と恭弥が呼ばれるのは当たり前として、守護者でもなんでもない私が駆り出される可能性が高くなってしまう。戦うことが好きな訳でもないし、何よりもヴァリアーに会うのが一番嫌なのだ。奴らに手加減という言葉がないし、暇潰しで掛かってくるのが一番嫌だ。想像しただけで背中がゾゾゾ、と悪寒が走りぶるりと体が震えた。
それだけは阻止せねば。無駄にイタリアへなんて飛びたくもない。そうと決まれば、まずはポモドーロと関係にある暴力団について調べねばならない。
そうこういう時こそ、私たちには素晴らしいコネクションがあるじゃないか。
何せ彼は公安の人間なのだ。
我ながら思いついた考えに鼻を鳴らして、デスクはポイと置いておいたスマホを手に取った。




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「ねえ降谷さん、犯罪を根絶したいと思います?」

「それは勿論だ」

「じゃあ最近動いた暴力団を!」

「残念だが俺の管轄ではないよ」


嘘つけ!と大声を出したくなるところだ。
スマホを手に取って降谷さんへ連絡する前にホテルの一室を予約した。そこへ来るようにお願いすれば降谷さんはすぐ行くよ、 と来てくれたのだ。相変わらず急な誘いにも来てくれる降谷さんは本当に優しい人だと思う。これは世の女が黙っちゃいないわけですよ。しかし、今はこの男の良さについて話している場合ではない。最近間違いなく公安が観察対象にしているうちの一つが動いたはずなのだ。現に今着いているニュースで、暴力団関係が〜なんて言っている。


「ほらあ!」

「あったとしても言えないな」

「……それなら、私も今回報告は無いです」


用意しておいた書類を灰皿の上へと乗せる。そこで降谷さんが、そちらの報告は? と聞いてきたが無視して人差し指と親指でパチンっ、と指を鳴らした。途端に紙から火が付き、徐々に薄い藍色の炎を大きくして紙を飲み込んでいく。ちりちりパチパチ、小さく爆発して最後は黒い灰になって消えた。その様を鼻で笑って、横に置いておいたホルダーへスティックを刺し電源を付けた。


「お話はおしまいですし、降谷さん忙しいでしょう?お帰りいただいても大丈夫ですよ」

点滅から点灯へ。確認して直ぐにスティックに口を付け煙を吸い込む。メンソールが喉にピリついた。ふー、と小さく煙を吐き出していくと煙は上へ上へと上がっていき、やがて空気に溶け込んでしまった。こうやって、空気汚染に繋がるのかな、なんて毎回考えるけれど、辞める気なんて更々無い。私は死ぬ間際までもコレを吸っていたい程に依存しているのだ。煙草を嗜んでいると、隣の空気が僅かに動いた。


「……部下からの報告だが、動きは確かにあったよ」

「へえ〜それって赤條会ですか?」

「君の想像にお任せするよ」


それだけで上等だ。 ありがとうございます、 と またバッグの中から先程燃やした紙とおなじ書類を手渡す。


「赤條会の前提ですけど、赤條は近い内に大きな騒動を起こすと思います。それが明日かもしれないし、来週かもしれない。はたまた来月かもしれませんが」

「ホォー……これが履歴か」

「ええ、輸出先である組織のPCからのデータなので、間違いはないと思います」

「何故赤條が騒動を起こすと?」

「私達が潰そうとしている組織から大量の爆弾と銃が買われています。それに赤條は今最もその組織との交流が見受けられますし」


ふー、と最後のひと口、煙を吐き出してホルダーからスティックを抜いた。灰皿の中で燃えたチリの上へと入れた。
ポモドーロのことばかりは降谷さんへと話すことは出来ないし、今回ポモドーロを潰すことを決める場合にはヴァリアーから人間を派遣してもらわざる得ない。こっちでシバいた後の仕事は財団に関係ない。私達財団はあくまで風紀財団だから。赤條のことも入れつつ、帰ってからは少し計画を立てよう。
腕を組みソファーの背へ体重を掛けて深く座り込んで、頭の中で順序の工程を組んでいく。


「君は何をしようとしている?」

「……顔が良くたって私は話しません」

「残念だ。ただ名前には傷ついて欲しくないだけなのにな」


頬を撫でる手に不覚だがドキドキとさせられる。なんなんだ本当に。
傷ついて欲しくないだなんて、そんなのお互い様じゃないか。ニヤリと笑って私も彼の頬を撫でた。