モニター

目が疲れた。ぼそりと出た声は多少掠れている。声の出具合から2時間程度はパソコンに向き合っていたな、と私は目を瞑った。今回の依頼も中々面倒なものだ。バーボンもとい、降谷零からの依頼は第一優先と決めている。面倒だからとかそんなことで、簡単な報告は自分の中で絶対的にありえない。だから毎回こうやって超時間パソコンと向き合うこととなるのだ。
ブルーライトカットのレンズが入ったメガネを外して未見を人差し指と親指で優しくマッサージをする。これをやると幾分か疲れが解れてくれる。1番疲れが取れるのは暖かいアイマスクをつけて休むのが一番だが、仕事はまだ終わりの目処が立たない。執務室のデスク、引き出しを開けたそこに佇むアイマスクにはもう少し会えそうにもない。
恭弥が唯一財団の中でも私と草壁だけが通ることを許されたこの部屋には、恭弥も草壁の姿も見られない。一人だということをいいことにだらしなくそのままだらしなく後ろへと倒れ込んだ。畳の上だから、痛みをさほど感じることもなく、畳のい草の香りに少し癒されながらぼーっと天井を見つめた。
ここが地下室なんて、未だに感じられない。1枚扉をくぐれば、ボンゴレの並盛アジトともなるこの地下アジトの構造は、何年経っても私の頭で中々覚えきれない。財団のアジトですら最近やっとほとんどを覚えたレベル。はあー、と息をついたところでまたタイミングよく携帯が鳴った。


「まだ終わってませえん」

《悪いんだが追加で頼まれてくれないか》

「請求してもいいのなら」

《勿論いつも以上に出す》

「ご用件をどうぞ」


手繰り寄せたメモにペンを走らせる。こういう時ヴァリアーにいるマーモンの様に粘写が出来ればすぐに事は終わるのになあ、と考えることも多々ある。しかし、正直言ってあの可愛い赤ん坊(金にがめつい)の粘写だからこそ見ていられるが、私が同じことをしたら多分全員がドン引きすることを容易に想像出来る。多分恭弥が一番距離を置くだろう。


《今日中に欲しい》

「了解しました。出来次第すぐにメールしますね」

《ああ、よろしく》


プチ、と切れた電話をパタンと閉じて再度目もを確認する。降谷さんは随分と人使いが荒いな と、小さくため息が零れた。他の仕事もまだまだ溜まっているというのになあ......とは思うのだけれど、報酬の為だと言い聞かせてまた、モニターへと視線を向ける。モニターに映っている対象者を大きく拡大してその様子を伺う。対象者はコインロッカーをうろちょろとしていることと、大きめのバッグを右方に掛けている。きっと組織絡みの件だろう。それを横目に右へ置いてあるノートパソコンで新たな要件である品物を探す。


「倍率が高すぎるんだよねえ......」


ミステリートレインのチケット。ついこの間も他の人間から依頼されてゲットしたのだけど、今回も二枚探さねばならない。確かに降谷さんも同じように依頼してきた人も忙しい人ではあるけれど、これの為に報酬を余分につけてくれるが、自分で探した方が安く済むだろ......と毎度毎度思う。


「まあその報酬のお陰で生きてるのもあるけど」


だからこそ、なるべく早くいくら掛かろうと要件は済まさねば。
オークションサイトで即決ボタンをクリックして今日中に送ってもらうようにメールを送って、そのままノートパソコンは当たらないように端へと追いやる。正面のモニターでバッグを押し込むおとこが、どのロッカーに入れたかを確認しながらメール画面を立ち上げて、バーボン宛てへと文章を打ち込んでいく。
カタカタ、とギーボードの叩く音に本日何度目か分からない欠伸がくわあ、と出た。


「あと少しだー」


終わったら飼い慣らし途中のコニリオを出して、沢山触って癒してもらおう。