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「そういえば名前の車に乗ったことがない」

「じゃあ今度乗ってきますよ」

「ああ、楽しみだな」


と、会話したのはまだ先週だ。
彼は有言実行で早速ドライブへ連れて行って欲しい、とお願いされたわけで待ち合わせ場所である黒曜へと来れば彼はもう既に来ていた。それはいい。それはいいのだが────


「随分とお洒落ですね……」

「いや、君こそ意外と大きな車を乗るんだな……」


降谷さんの格好は安室透でも無い、そこらの人が霞むほどのお洒落な格好でイケメンだ。いつもと違う姿に少し驚いていたのだけど、どうやら彼も車に驚いていた。
そんなに驚くこともないだろう、と自分では思うのだけれど他人からすれば私にしては大きい車だからなのだろう。恭弥も買った当初は「意外だね」と呟いた程である。こう見えても運転だけは得意分野なのだ。降谷さん程ではないのだけれども。


「VolkswagenのGolfとは」

「めちゃくちゃ素晴らしい動きしてくれますよ…まあ乗る頻度なんて少ないんですけどね」


どうぞ、と助手席の扉を開けると降谷さんは「ありがとう」と言いながら乗り込んだ。それを確認してから自分は運転席の方へと戻る。
すると降谷さんはシートを触って「いいな」とのつぶやきに私は思わずニンマリとして得意気に「GTIの素晴らしさですよ」と返した。シートは他のと違い、皮のシートとなりチェック柄のシートになる。それに内装も高級感溢れているのがこの車の特徴だ。


「しかし欧州車に拘りでもあるのか?」

「日本車よりも欧州車の方が色と内装が好きなんです」

「俺の車は」

「スポーツカーに乗る程車好きなわけでもないので」

「残念だ」


そう言って降谷さんはナビ部分を触りだした。Mediaと書かれた部分を押すと私のスマホに入っている音楽が流れ始める。Bluetooth接続とは便利で良いものだが、この人の前ではあまり宜しくない昨日だな、とphoneのボタンを見て苦笑いをしてしまう。


「せっかくのドライブデートですしBluetooth切っておきます」


スマホを操作してBluetoothをオフにすると車内に流れていた音楽が止まり、スマホとの接続が切れた。降谷さんはにやりと笑い薄く口を開いた。


「何か見られるとまずい物でも?」

「まさか……まあ情報を取られるのは嫌ですからねえ」

「ははは、今日は俺もそんな気にならないよ」


デートなんだから、と先程私が発した言葉で返してかちゃんとシートベルトを締めた降谷さんに「ははは」と曖昧に笑い返して自分もシートベルトを締める。