奥さんと中途覚醒
ベッドの中、自分より白く柔らかい背中に触れる。
触れる度に小さな声で呻く名前に面白くなって、人差し指でツーとその素肌を触れるか触れないかくらいでなぞる。時々ビクリとするその姿はまるでウサギのようで可愛い。
「れ、くん」
「んー?」
「擽ったいよ」
「かわいい」
んー、なんて目を擦りながらこちらへ寝返りを打ち、眠たそうな瞼を開けた名前の目と交わる。片手で名前を自分の方に引き寄せてそのまま抱き締めると、名前は俺の胸板へと顔を埋めた。
「擽ったいんですけど」
「私も仕返しだー」
ぐりぐり、顔を押し付けるようにする姿は見ていて和む。かわいい、その一言しか出ない。
先程まで静かに眠っていた名前は俺が触ったせいで起きてしまった。いや、俺が起こした。訂正。
今日は久しぶりに組織関連の資料を少し目を通したせいか、失ってしまった友の夢を見た。その夢を見る日は絶対的に中途覚醒してしまう。目を覚ましてしまって数分、眠れないことを理由に名前の背中を触ってしまったのだ。温かみのある肌に触れることで、落ち着くことが出来る。抱き締めるだけなら、起きなかったかもしれない。でも、俺は、名前に目を開けてもらいたかった。自分勝手だが。
「起こしたな......」
「んー?いいよ」
「ごめん」
「大丈夫だよ、居るよ」
ほら、といって自分の背中に名前の腕が回った。素肌でいる体は、直に名前の体温を感じる。ここに存在してることをアピールして。
ああ、安心する。自分よりも小さな身体に抱き締められて、名前に回していた腕に力がグッと入る。苦しいんだけど?なんて聞かれたが、それに対して力を緩めることはしない。
「うちのれーくんは本当にはベビゴリですねえ」
「誰がベビゴリだ」
犯すぞ、なんて言っても名前はクスクスと笑うだけ。本気で言った訳では無いということが、分かっているのだろう。
自分の腕の中で小さく笑う彼女に、日中気を張って疲れた精神が休まる。夢を見て暗くなった気持ちも。自分にとって彼女は最早、精神安定剤だ。そんな風に考えている俺はきっと、依存をしているのだろう。
「ほら、ベビゴリくん、寝ますよ」
「まだ言うか」
「うふふ、零くん、寝よ」
「......次の休みに、また、甘やかして」
「じゃあその日はハグしまくろうね。力は緩めでお願いします」
「どうかな」
「じゃなきゃその日一日、ベビゴリって呼ぶから」
「それは嫌だな」
腕の力を緩める。さあ、寝ようか。おやすみ。愛してる。自分らしくない、そんな甘ったるい言葉を紡いでから名前の唇に自分の唇を合わせた。
(零くん、起きて)(ん、おはよ)(零くんの胸にヨダレ垂らしてました)(それは、拭いてくれ)