降谷さんと晩酌
「バァ〜ボン」
「なんかムカつくな」
いつもの晩酌中。私はいつもと変わらずカシスオレンジを飲み、また零くんもいつもと変わらずバーボンを飲んでいた。
そこで、思いついたのがバァ〜ボン。突如出た言葉に零くんは眉を顰めている。そりゃあ、嫌な事ばかり思い出すというのが一番なんだろうけど。しかし私は思う。
「バァ〜ボンなんて言われたくなけりゃ飲むな!」
「それは俺の自由だ」
カラン、と氷が音を立てた。確かに言い方はアレだけど、正直こうやって上半身裸でバーボンを飲むその姿は、私の欲求を掻き立てる。ふざけたことでもしてないと、私の中にある欲がどんどん溢れそうで。怒られたし、欲は止めたいし。落ち着けようと、手元にあるカシスオレンジをごくごく、と飲み込んだ。
「カシスオレンジって甘くないか?」
「甘いから美味しいんじゃん」
「本当に甘い酒が好きなんだな」
「因みにカシスミルクもめっちゃ美味しいよ」
「俺苦手」
グラスをコツコツと突くその綺麗で長い指は、また私を刺激する。
分かってやっているのならただの意地悪だけど、零くんはテレビに視線を注いでいるので、自然とする行為なんだろうなとわかる。お酒の飲みすぎなのか、欲求でなのか、顔が火照っているのが自分でも良くわかる。
いつも私に愛を囁くその唇で零くんはまたバーボンをコクリと喉に通していく。
......末期だ。それにすら妬いてしまった私は本当にもう末期。その唇で、私に。
「零くん」
「ん?」
こちらを向いた零くんの唇は、液体によって少し濡れていて、首元にある男性特有の喉仏が私の為に動いて。ああ、ダメだ。
「零くん好き」
「どうした?」
「今すぐ零くんにくっつきたい」
「珍しいな」
コトリとグラスをローテーブルに戻してからこちらに向き、手を広げて、おいで、とする零くんに私もグラスを戻してその広い胸板に抱き着いた。
暖かい素肌に顔を埋める。同じボディソープを使っているのになんだか零くんの匂いがして、私の心臓も脈が早くなる。どうして零くんはこんなに私をドキドキさせるの、どうして零くんもこんなにドキドキしてるの。まるで同じ気持ちだったのかなと錯覚してしまうじゃないか。
「なっ」
「先に謝るね、ごめん!」
錯覚でもいいや、夫婦だもん。そんな言い訳をして私はその胸板に思いっきり吸い付いた。
離して出来る紅点にひどく満足感を得た。
(キスマーク)(ごめんね?)(じゃあ俺も)(ベッドに入ってからがいいなあ)(満たしてあげますとも)