01
桜の花が春の柔らかい風でふわりと舞っていく姿を見ながら、黄昏ていると楽しそうな声が外から聞こえてきた。桜から視線をその声の方へと持っていけば、一年生の仲良し3人組の声がする。1人の肩には赤ん坊を乗せていた。
(あの赤ん坊...)
確か雲雀が面白い赤ん坊が居ると教えてくれたのはつい先日の話だ。名前はその話を聞いた時に、まず、赤ん坊が話すということに疑問を抱いた。しかし、現に歩いたり雲雀へと話しているということは普通の赤ん坊をではないことが確定だ。名前は不思議に思いながらもじっ、と視線を外すことなくその肩を見ていた。
「...!」
見つめていた時、その赤ん坊がこちらを見て一言呟いた。何を呟いたか、読唇術を得ている名前はそれに気付き目を開かざる得なかった。
「ciao」
チャオなんて呟いて、なんていい赤ん坊だ。それに、こちらの視線に気付いたとは、中々察することが出来る赤ん坊らしい。
くす、っと笑って小さく手を振り返した。
同時に ガチャ、と扉が開く音がしてそちらへ視線を向けると、雲雀が頬に付着し乾いた血をグッと拭いながら入ってきた。名前はまたか、と慣れた手つきで引き出しから救急箱を取り出し、コットンに消毒液を含ませる。雲雀も当たり前かのように名前へ頬を差し出した。
「例の赤ちゃん、今さっき見たよ」
「赤ん坊のことかい?それなら僕はさっき軽く話したよ」
「そう...あの赤ん坊絡むとよからぬ事が多いから控えてよ」
ぺた、と大きめの絆創膏を貼って手当を終えると雲雀は ありがとう、 と小さく漏らした。意外と素直だよなあ、と名前は小さく漏らす。
名前にとっても雲雀にとってもお互いが1番信頼のできる相手である。それ故に名前も以前雲雀にボコされた相手に狙われること多々。
「僕がいない間何かあった?」
「何も。いつも通り草壁がある程度やってくれたから」
「そう」
ドカリとソファーへ座ると雲雀に、デスクの上に放置された紙を片付ける名前がふ、と動きを止めた。その様子に雲雀は「どうかした?」と聞くが、一枚の用紙を見つめたまま話さない名前に少しの苛立ちを覚えた。