奥さんと玉ねぎ
今日はキーマカレーにします。
そうメールを送ったすぐに楽しみにしてる、と返信が来た。
時刻は18時、きっとまだ仕事をするだろうから帰りは20時くらいと予想して、炊飯予約の時間を19時40分に設定をしてから食材の準備をしていく。
真ん中の野菜室からセロリと人参玉ねぎレタスを取り出した。
レタスとセロリを軽く水洗いして水気を取ってからレタスの方は手で割いてお皿に置いて終了。ラップして冷蔵庫へグッバイ。セロリは茎の部分だけを切り落として軽く筋をとる。斜め切りで一口サイズに切ったら予め合わせておいた合わせ調味料と一緒に保存袋に入れて揉み込み水分が出てきたところでセロリちゃんも冷蔵庫へグッバイ。
ここまででかかった時間は僅か10分。我ながら雑な作り方してると思う。何でも完璧にスマートにできる主人と違って私は味がよければオッケーな人間なのでこれでいい。零くんからも名前らしくて好き、とお褒めの言葉も貰えたくらいだから。味さえよければいいの、誰に言い訳するでもないけれど、あまりの雑さに少し自分語りをしてしまう。
次はみじん切り頑張るか、と泣く確率が高すぎる玉ねぎを避けて人参の皮をピーラーで剥いてから切り刻んでいく。刻み終えて来るのは玉ねぎさん。
この玉ねぎは以前零くんすらも泣かせた玉ねぎた。仇を返さねば!と勢いで玉ねぎにシャッシャッと包丁を入れていった。
「う、ぅぐぅ、っああ」
大惨敗。3分の1がみじん切りになったところで声に出さなきゃ辛い程の涙が出てくる。
ティッシュで拭いても拭いても出てくる涙と鼻水にもう辞めようかな、なんて気持ちにされる。
でもここで負けてしまったらどう考えても何か足りないキーマカレーになってしまう、泣きながらGoogle先生に聞こう、ティッシュで涙を拭きながら
玉ねぎ 泣かない 一番効くやつ
で検索をかけた。たくさん出てくる方法に口を開けたまま切る、と書いてあった。口を開けたまま切ることによって唾液がでてうんたらかんたら、これはすぐに出来る。最後に涙をぐっと拭いて口を大きく開けて玉ねぎに立ち向かった。
「ふ、ぅぐ、」
「...ほら涙拭いてやるから」
「お鼻もぇぐ、拭いてっあと少しで、ぅぐっ、出来るからあ」
明日の休みに備えて、溜まってしまっていた書類を全て片付け帰宅。
帰宅した時に名前は泣きながらカレーを作っていた。おがえでぃ、と目からはポロポロと涙が出ていて何かあったのか?と聞いたら口を開けたまま玉ねぎを切ると涙が出ないって書いてあったからやったのに私のやり方違うのか涙がずっと出て止まらない、その返答に名前らしいな、と思いながら涙と鼻を拭いて、もう1枚のティッシュを細かく丸めて名前の鼻に詰め込んだ。
うう、なんて呻きながらカレーを作っている名前を見てると本当に癒される。結婚してから2年、名前に結婚を機に仕事を辞めさせて、この家で毎日自分の為に動いて自分の為にご飯を作ってくれて、専業主婦なんて嫌じゃないか?と何回聞いても零くんの傍に居られるんだから世界一の幸せ者だよ、と答えてくれる。その答えは俺を世界一の幸せ者にしてくれる言葉だ。
「これからも俺だけを見てて」
「この状態で!?」
「ん」
「も、もちろんですとも」
鼻にティッシュを詰めたまま微笑む名前は本当に世界一可愛い降谷名前だ。
(名前好き)(ねえ、私今凄く恥ずかしい顔なんだけど)(そんな顔も好き)