降谷さんとお土産
「また、沢山のお土産だねえ」
「名古屋といえば赤味噌!と部下がくれたんだ」
へえ〜、と返事して渡された容器をマジマジと見てみる。名古屋には一度旅行で行ったことはあるけれど、確かに名古屋の名物に味噌煮込みうどんがあった。
あそこでとても有名なうどん屋に並んで食べたのを思い出す。こっちでもたまに味噌煮込みうどんを口にするが、名古屋で食べた味噌煮込みうどんは全く別物だった。まず麺が違う。シコシコと少し固めの麺に味噌のトロッとした汁が絡んでとっても熱いのだけど、それがまた食欲をそそり美味しかった。それに、有名なとんかつ屋さんでも、赤味噌のタレで食べるとんかつは、今まで食べた中で一番美味しいと感じた程。思い出すだけで、お腹が くぅ、と小さく音を立てた。
「やっばい、お腹空いた」
「今日のご飯は?」
「アジの開きと里芋の煮ころがし、インゲンの胡麻和えに冷奴です」
冷蔵庫からインゲンの胡麻和えと朝のうちに作った里芋、水切り済みの豆腐を取り出しおぼんへと乗せる。正直今は、あのとんかつがすごく食べたい。食べたくて仕方が無いのだけれど、今日のメニューに揚げ物なんてない。明日まで我慢するか、と心内で決めるもまだ少し諦められない。
後ろではガサガサ、と袋を漁る音が聞こえる。お土産はこれだけではないんだろうか? 期待をしたいのはやまやまだが、そこにとんかつがあるわけが無い。
今日は仕方ない、明日は絶対とんかつにして、レシピであのソースを調べてみよう。赤味噌を頂いたんだから、出来るでしょう。机の上へ配膳し、キッチンへと戻りフライパンから焼きたてのアジの開きを皿へと乗せた。
「あ、今日冷奴だったな」
「うん?そうだけど」
零くんの手にはお味噌のチューブが握られている。アジを乗せた皿を机へと並べてから、それは? と首を傾げれば零くんが包装されていた袋をピラッ、と見せてくれた。
調理例として載せられている写真には冷奴が載っていて、そこで ああ! と気付く。
「冷奴にかけれるんだ!」
「みたいだな。丁度いい、やってみようか」
零くんは早速フタを開けて冷奴へと掛けてみる。お味噌の香りがふわっ、と香ってさっきまでとんかつで頭がいっぱいだったはずなのに、今はこのお味噌がかかった冷奴を早く食べたい、と頭の中が埋まった。また、お腹が小さく鳴る。
「随分とお腹が空いているみたいだな」
「名古屋の物を見てから急激に空きました」
だろうな、と笑って、次は私の冷奴へとお味噌を掛けていく。その行動を横目にまたキッチンへと戻り、棚からお箸とコップを取り出してキッチンの電気を消し、テーブルへと戻った。
テーブルへと最後に乗せ、着席すると目の前に並べられた料理、そして冷奴に思わず わあ! と声が出る。
「ハートだ!」
「嬉しい?」
「凄く嬉しい!さっすが零くん!」
「ハートの中に薬味入れて召し上がれ」
ああ、なんて素敵だろうか!
ハートの形にされたお味噌に口角が勢いよく上がる。
食べようか、その言葉に2人で手を合わせて、いただきます と食事を始めた。
(何これ!すごく美味しい!)(俺の愛情入り)(零くんの愛情で私太りそう)(俺の愛で幸せ太りだな)(零くんの腕立てが辛くなるよ?)