奥さんと下着
「これは......」
「ニューパンツ〜」
我ながらいい買い物をしましたねぇ、なんて名前が手に持つそれは、クマのイラストが入った下着。風呂へ入っている間に用意してくれる名前は本当にいい妻だと思う。
「まさかだけど、俺がそれ履くのか?」
「え?逆に誰が履くの?」
「嘘だろ......」
「可愛いじゃんクマさん」
目の前へ差し出してくるそれをマジマジと見る。幸い全面プリントではなく、右側だけ。どうしてか分からないが、時々こうやって俺に似合わない物を買ってくる名前はきっと楽しんでる。そしてそれを着用する俺を名前は腹を抱えて笑うのだ。俺からすれば何も面白くないのだけれど。
「おっさんがこれはキツいだろ」
「いいじゃん、私しか見ないし」
「いや、そういうことじゃないと思う」
「いいから早く履いてよ」
お茶いれてくるから、と出ていってしまった名前にため息が出る。
仕方ない、用意してくれたんだ、諦めて腰に巻いていたタオルを外してその下着に足を通した。
「だーっはっはっは!」
「......」
「可愛い!あっはっ!零くん可愛い!だっ」
毎度の事ながら腹を抱えて大笑いする名前を睨みつける。しかし、それでも腹を抱えて笑う姿にもう何も言うまい、とソファーに腰を落とした。
「零くん最高」
「俺は最悪だ」
「超可愛いよ」
「いや、俺に合わないだろ」
「合わないねえ」
合わないの分かってるならもう買ってくるなよ、そう呟いて用意されたお茶を啜る。隣に座った名前も笑いながらお茶を飲んでいた。自分の下半身に視線を向けるとなんとも可愛らしいクマがこちらを見ていた様に思える。誰かに見せるわけでも無いが、やっぱり違和感を拭えない。
「大喜びの零くんにいいことを教えてあげよう」
「そうか、名前には大喜びしておる様に見えるのか」
「聞いて、私とお揃いなの」
「......マジか」
「大マジだよ」
名前とお揃い、名前とお揃い、その言葉が頭の中でぐるぐるして思わず口角が上がってしまう。それを隠すように手で口元を押さえるが、黙ってしまった俺に名前が覗き込んでくる。
「零くん口元隠してるけど目尻下がってるよ」
「無理、我慢出来ない」
「うふふ、大喜びだね」
喜ばないわけが無い、分かってるくせに。その言葉を言う代わりに名前を思いっきり抱きしめて首元に思いっきり吸い付いた。
(このまま確認しよう)(髪乾かしてよ)(見たくて見たくて我慢出来ない)(クマさんに襲われちゃう)