03
ガラッ!!!
「ニュース!ニュースっす!聞ーてくださいよー!」
勢いよく戸が開くと、興奮気味な後輩が入ってきた。
「なんだい赤也、朝から騒々しいよ」
部室の掃き掃除をしながらなだめるように声をかける。
「げに、お前さんは中学の時からテンション変わらん・・・若いのう」
朝に弱い仁王は眠たげだ。部室のベンチに横になり、目線だけちらりと動かしながらため息をついている。
「どーせつまんねぇことだろぃ??」
「さっさと朝練はじめよーぜー」
まったく関心を示さない、丸井とジャッカルはすでに練習にとりかかる準備を終えていた。
「いやいや、これはホントのニュース!うちのクラス、昨日女子の編入生が来たんスよ!」
「―――ーへー」
「それがニュースになるほどか?編入してくるヤツはあんまいねぇけどな、珍しくはないだろぃ?」
「や、そーなんスけど、編入生がニュースってわけじゃなくて・・・」
「で、なんなんだい?」
「この編入生、マネージャー候補だってピンときたんです、俺!!!」
「――――」
皆揃って静止した。
「んぐっ!!!げほ、・・・・あ、赤也がマネージャー候補見つけてくるだと・・・?」
丸井は、噛んでいたガムを思わず飲み込んでしまったようだ。
「そりゃ確かにニュースじゃな」
「マジか。女友達はくさるほどいるけど、赤也は部で一番マネージャーに厳しいのに・・・」
ジャッカルは開いた口が塞がらない様子だ。
「どうして、そう思ったんだい?ジャッカルの言う通り、今までお前はマネージャー志望の女子をことごとく追い返してきたのだから、俺もけっこう驚いてるよ?」
そう、我が立海テニス部は全国区で知名度の高い強豪校だが、中学の頃からマネージャーはいない。
「・・・今まできたマネ希望の女子って、始めは仕事するけど、なんやかんや最後は男目当てのヤツばっかだったじゃないですか・・・」
赤也の言うことは否めない。
・・・1年前、マネージャーはそれなりに募集していたのだが、純粋に、テニス部を支えたいと思う者はいなかった。ただ、仕事自体はそこそここなせる者もいたので、現状を考えれば目を瞑ることも考えた。
だが、赤也だけはそれを許さなかったのだ。
彼は、女同士がいがみ合う、妬み合うのが一番醜いと言っていた。
そんなものを見ながらテニスができるか、と。
しかし、東京の、氷帝学園ほどではないにしろ選手層も厚い。効率よく練習するためにはマネージャーがいよいよ必要になってきたのは確かだった。
「・・・・その子は、見込みありそうなんだね?」
「はい!・・・・・なんつーか、女子っぽさがないっつーか、」
「そりゃ問題ぜよ、赤也。女なら色気が多少でも欲しいところじゃ」
「違いますって。媚びる感じが全くないんです。芯がはっきりしてるというか。
あ、顔は可愛いですよ、真面目なカッコしてますけど」
「へぇ、赤也がそこまで言うなんてね」
「試しに、立海テニス部に興味ねぇのか、って聞いたら、怒り出しました。あんたなんの為にテニスやってんだって。そりゃもう、絶対零度の視線で」
「って、お前それ嫌われてんじゃん」
「まぁ、そうかも」
赤也が苦笑しながら言う。
確かに見込みのありそうな性格のようだ。
「―――ーそれは、昨日仁王と柳生がストリートテニス場で会ったという女子生徒ではないのか?」
「とても興味深いお話ですね」
「わっ 柳・・・急に出てくんなよ・・・びっくりしただろぃ、またガム飲み込むトコだったぜ」
部室の入り口には我が部の参謀、柳蓮二と眼鏡を光らせた柳生が立っている。
「へっ?会ったんですか?仁王先輩たち」
「どういうこと?」
赤也と俺は、仁王と柳生に交互に視線を向けた。
「――赤也、その編入生の容姿はどんなんじゃった?」
「ええと、背が低くて、色白、髪は地毛で茶色って言ってたな」
「ふーーん・・・似とるな、俺が会うたんもそんな子じゃった」
「今年の新入生でそのような容姿の生徒は…0名だな」
「でも・・ストリートテニス場って・・・なんでそんなトコに?まさか、」
「ええ、彼女はそこで一人、サーブ練習をしていました。私たちが見た時、彼女が打っていたのは…ツイストサーブでした」
柳生が、くい、と眼鏡のブリッジを上げた。
「ツイストサーブ!?ソイツ、経験者じゃん!」
丸井が目を見開いている。
「そうですね、そのように見受けられました・・・ですが」
「俺たちに見つかったとたん、忘れてくれっちゅーて逃げてったな」
「アイツ、テニスやってたんだ・・・」
「そう・・・テニス経験者で竹を割ったような性格の女の子か。マネージャーには申し分ないね。でも赤也、今の話の流れだと、どうやらテニス自体を避けてるみたいだね?彼女は」
「はあ、確かにそれが課題っすね」
首をすくめて赤也は答えた。
「赤也、その生徒の名は?」
柳が目を少し開いて赤也を見た。
「・・・・三島。三島凪子、です」
「――――」
「・・・・どうした?幸村」
「・・・・ああ、いや、なんでもない」
「・・・・・・三島凪子か・・・データをとるか」
柳が俺の様子を興味深げに見ている。
ほんのわずかな動揺を感じ取られたようだ。
無理もない・・・・赤也の告げたその名前は・・・・
――――3年前から…いつか探し出すと決めた・・・少女の名だった。
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