断ち難き愛染

05


 翌朝、起床時間ぴったりに起きて準備を済ませると、エマは朝食をとりに大広間へ向かった。
 周りに誰も座っていないスリザリンの席につき、皿にバランスよく盛り付けていく。
さあ食べようとしたその時、ドサッと隣の席に誰かが座った。

「おはようエマ。昨日はよく眠れたようだね」
「…ごきげんよう」
「君、もっと量を食べた方がいいと思うよ。特に肉」

 ドラコは自分の皿に食事を取り分けると共に、エマの皿に乗っていた物を足していった。
 皿の底が見えなくなった頃、これでよしとでも言うように彼は食事を始める。

「い、いただきます…」

 なんて横暴な人なんだ。と思ったが、まあ彼なりの心遣いなのだろうと無理やり納得し、エマは黙々と食べ物を口に運んだ。

 ドラコの食事が終わった頃、エマの皿の上にはまだ2分の1もの食べ物が残っていた。
いつもの1.5倍は食べている。これだけ食べればもう十分なはずだ。
 エマのお腹ははち切れそうだった。
だが、食事を残すというのは罪悪感からできず、オレンジジュースをゴクリと飲み、一息つく。

 ふと隣を見ると、ドラコは少し離れたところで大勢のスリザリン生ととても楽しそうに話をしていた。
 彼がバカバカしい仕種で気絶する真似をすると、どっと笑い声があがる。
昨日ハリー・ポッターが気絶した話を未だにしているようだ。
 やっていることが他人を馬鹿にすることじゃなければ、ただのクラスの人気者に見えるのに。

 その後食事を再開してすぐ、向こうの方にケナガイタチの死骸を振り回す『魔法生物飼育学』の担当教員――ハグリッドを見てしまい、気分が悪くなった。

 エマは大広間が閉まるギリギリのところで食事を終えた。
 制服にローブがあってよかった。これで膨らんだお腹が目立つことがない…。
 ふらふらと力なく歩きながら大広間を出ると、窓にもたれかかりながら教科書を読んでいたドラコが顔を上げた。

「やあ、遅かったじゃないか。早くしないと授業が始まるぞ」
「そう…待っていてくれてありがとう」
「校内を案内すると言ったのは僕だからね」

 やれやれといった顔でため息をつくドラコに目を細めると、ほら早く。と言って何食わぬ顔で前を通り過ぎる。
 エマは、誰のせいでこうなったと思ってるんですか。と言いたかったが、本当に授業に遅れそうだったので黙って彼の後ろをついて行った。

「ねえ、次の授業は何?私、選択科目は決まっているけど時間割をもらってないの。教科書も急いで取りに行かないと」
「あぁ、そういえば君の時間割を預かってたな。次は古代ルーン文字学だ。もう教科書を取りに行く時間もないし、僕のを見せてあげるよ」
「ルーン文字は選択科目よね?あなたもルーン文字を取ったの?」
「だからわざわざ待っていたんだろう?」
「そうだったの…ありがとう…」
「礼はいい。ただのついでだ」

 一々感じの悪いひとだ…。



Bkm


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