天道輝


みんなの大事な衣装が入ったダンボール箱を事務所から倉庫まで運んでいた私は、三往復目に差し掛かったところで輝さんと鉢合わせた。
「プロデューサー、大丈夫か?」
私の手元を見た輝さんは困ったように笑う。あ、と声を上げる前に手元に抱えていたダンボール箱は輝さんの腕の中に収まっていた。
「輝さん!すみません...」
「いいって!二人でやった方が早いだろ?」
「そうですね。ありがとうございます」
あと二往復しないとダメかなと思っていたところだったので、とても助かった。今日は桜庭が、翼が、なんて話を聞きながら並んで階段を下りる。視線を感じてチラッと輝さんの方を見上げると真剣な表情を浮かべていた。
「最近無理してないか?」
「ちゃんと飯食ってるか?なんてまるで母親のような問いに少し笑ってしまった。三食きっちり食べてますよ!と軽快に答える。輝さんの足が止まったので、どうしたのかと振り向いた。
「新しい奴らも入ってきて大変だと思うけどさ」
輝さんは1度言葉を切り、ゴホンっと咳払いをする。そして屈託のない笑顔で言うのだ。
「プロデューサーも俺達の事頼ってくれよな!今まで一緒に頑張ってきた仲間だからさ」
ずっとこの笑顔に支えられてきたのだと思うと、私の心は軽く、そして暖かくなった。
「...これからも、ですよね」
「あぁ!これから先もよろしくな、プロデューサー!」
階段の窓から差し込む柔らかな夕陽が私たちを包み込んだ。