円城寺道流


深夜の男道ラーメンの客はもう既に私しかいなかった。というのも道流さんが仕事終わりに特別に店を開けてくれたのだ。本人も疲れているだろうに、うちで夜飯でもどうっすか?なんて誘われてしまえば断る理由もないだろう。
「麺固カラメやさいダブルにんにくあぶらマシマシラーメン師匠スペシャル、お待たせしました!」
「ありがとうございます!ではいただきます!」
バチッと子気味のいい音を立てた割り箸を両手の親指に挟み、手を合わせる。
「毎度師匠の食べっぷりには驚かされてます」
「翼くんには負けますよ」
「ハハッそうっすね!」
ちなみに765プロの四条さんとは生っすか!?サンデーの収録中に出会ったことで意気投合し、ラーメン二十郎に通い詰めた仲である。
「アイドルもプロデューサーも体が資本ですから、食べれる時に食べないと!」
「そういえば師匠は元アイドルでしたね」
「もう昔の話ですよ。あの時は食べすぎで衣装入らなくなったら困るから限度を考えろってよく怒られちゃって!」
今なんてちゃんと飯食べてるか?ってこの前輝さんに聞かれたりして、と私は笑う。
「忙しそうに仕事する姿ばかり見てますから。心配にもなるんじゃないッスかね」
「ちゃんと元気だぞ!って証明するのに道流さんには証人になってもらわないと」
「もちろん、自分で良ければ」
カウンター越しに笑い合うのも程々に、麺が伸びないうちに山盛りにトッピングされたラーメンがスルスルと私の胃の中に吸い込まれていくのを嬉しそうに道流さんは眺めていた。