卯月巻緒


私は打ち合わせが終わり、先方から頂いた白いケーキ箱を片手に事務所に戻ってきた。事務所のドアを開けると、この後レッスンが入っているであろう巻緒くんがソファでティータイムを楽しんでいた。先に彼の学校が終わったのか、どうやら咲ちゃんたちはまだ来てないようだ。
「プロデューサーさん!それ!」
「あぁ、今日先方さんから貰ったケーキだけど…巻緒くんも一緒にどう?」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
どうやら有名な老舗のケーキだったみたいで、大好きなケーキに関して目敏い巻緒くんはキラッキラのオーラを放っていた。プロデューサーさんの紅茶もすぐ入れますね、なんて手早くカップやお皿の準備をしてくれる。
「色々種類あるみたいだけど巻緒くんどれにする?好きなの選んで」
ショートケーキにチーズケーキ、チョコケーキにモンブラン、ミルフィーユなど様々な種類が箱に詰められていた。先方もよっぽどここのケーキがお気に入りとみた。巻緒くんはケーキからケーキに視線を行ったり来たりさ迷わせているのが、まるで小さい子がプレゼントを選ぶ時のようで可愛くて笑ってしまった。
「うーん…どれも食べてみたいけど、やっぱりショートケーキですかね!」
「じゃあ私はチーズケーキにしようかな」
箱を開いてから事務所のキッチンに常備されているケーキサーバーでケーキを用意してもらったお皿に移動させる。
「召し上がれ」
「いただきます!」
すでにフォークを手に待っていた巻緒くんは早速ケーキを口に入れる。美味しいです!と興奮気味に感想を述べていく姿に自然と私も嬉しくなってくる。
「今日のレッスン頑張れそう?」
「へへ…ケーキ充電完了したのでたくさん頑張れます!」
私は拳を握る巻緒くんの口元についたホイップクリームを拭ってあげた。