薔薇と宝石の約束




「ねぇ、快斗。何か隠してる事、あるよね?」


朝、教室で会うなり連れて来られた屋上で、柚希はいきなりそう言った。





jewel.23
〈秘密だらけの相関図〉







「か、隠してる事?」

(昨日のメールが遠まわしだったから、いきなり確信突いて聞いてくるとは思ってなかった…!)


動揺を隠しきれない快斗を、柚希はじぃーっと真剣に見つめてくる。


「何の事か分かんねぇんだけど…。」


冷や汗を流す快斗をさらに見つめると、柚希は一歩近づく。


「ぜったい嘘。」

「っ!?」


ビシッと一言放った柚希は、快斗の額に自分の手のひらを当てる。


「ほら!やっぱり熱あるよ!休んでなくちゃダメ!」


少し怒った顔で言う柚希に、快斗はぽかんと拍子抜けした表情で見返す。


「え、熱?」

「顔赤いし、いつもと雰囲気違ったもん。…取りあえず保健室行こう?」

「いや、大丈夫だって。ダルい訳でもないしさ。」


へらっと笑って言ったつもりだが、柚希の顔は曇るばかりで、快斗は戸惑う。


「ほら、やっぱり変だよ。」


そう言って柚希は、快斗の腕を掴んで屋上を出た。










−−カラカラカラ


「失礼します。」

「あら工藤さん。黒羽君なら、奥のベッドよ。」


朝、快斗を連れて保健室に来ると、やはり少し寝た方が良いと保険医の美園に言われ、快斗はベッドに寝かされていた。

本当は昼休みに様子を見にくると言ったものの、どうしても気になり集中出来なかった3限目が終わってから、我慢出来ず柚希は保健室に足を向けていた。


ベッドの周りを囲んでいるカーテンをそっと開けると、うっすらと汗をかいた快斗の寝顔は、まだ苦しさを残している。


「今日はもう帰った方が良いかもしれないわね。」

「あ、じゃあ私が連れて帰ります。家の人、しばらく出掛けてて1人だって言ってたので。」

「そうなの?だったら、担任の先生には私から言っておいてあげるわ。」


優しく微笑んでそう言う美園にお礼を言うと、柚希は荷物を取りに教室へ戻って行った。


「…黒羽君。」


快斗の肩を軽く叩いて呼ぶと、快斗はうっすらと目を開ける。


「今、工藤さんが荷物取りに行ってくれてるから、今日は帰ってゆっくり休みなさい。工藤さんが家まで送ってくれるから。」

「…柚希が?」

「ええ。…黒羽君、愛されてるわね。」

「っ?!」

「あら、違うの?」


さらっと言われた言葉に、快斗が目を見開いて赤い顔をさらに真っ赤にさせると、美園はイタズラっぽい笑顔でさらに言ってくる。


「お、俺達は別に、そういうんじゃ…!」

「取りあえず、黒羽君は工藤さんの事が好きなのね。」

「ちょ、先生?!」

「見てれば分かるわ。じゃあ、“そう”なったら先生にも教えてね!」


ウインクまで付けて言われた快斗が何も言えないのを見て、美園は楽しそうに笑った。










柚希は快斗の鞄から家の鍵を出すと、カチャリとドアを開け玄関に快斗を押し込んだ。


「ちゃんと着替えて布団に入ってね。水分もこまめに取って、汗かいたら出来ればまた着替えて……大丈夫?」


帰り道の間もどんどん容態が悪化していそうだった上、ボーッとして聞いてるか聞いてないか分からない様子の快斗に、柚希は非常に不安を感じる。


「快斗?」

「……あぁ、だいじょぶ…」

「……………っごめん快斗。上がらせてもらうね!」


じーっと快斗を見つめた後、意を決して自分も靴を脱ぐと、快斗を支えながら聞き出した部屋へと連れて行く。

着替えの場所を本人に確認して、出来るだけゆったりとした楽そうな服を取り出す。


「はい、着替えは流石に自分でしてね。キッチンとか、少し勝手に使わせてもらうよ?」

「…おー。」


分かってるのか分かってないのか取り敢えず返事をした快斗を置いて、1階に降りて恐る恐るドアを開ける。


「失礼しまーす…。」


理由があるとはいえ、他人の家をあちこち見るのは気が引けて、思わず小さく呟きながら中を覗く。

(あ、洗濯機。って事はこの辺かなぁ…)


それっぽい棚をそーっと開けると、第一目的のタオルを見つけて2枚拝借する。
洗面台の下の棚からプラスチック製の小さめの桶も見つけて、キッチンに移動する。


「冷蔵庫は一番気が引ける……。」


取り敢えず今必要で一番無難な、製氷機部分の引き出しを開けると、ちゃんと水は足してあるらしく出来上がった氷が詰まっている。

それを桶に少し移して水を張り、タオルと共に快斗の部屋へと持って行く。



−−コンコン


ノックしても反応が無く、そーっとドアを開けると、言われた通り着替えた快斗がベッドで既に眠っていた。

ちゃんと掛かっていない布団を掛け直し、氷水で冷やしたタオルを絞って快斗の額に乗せる。
そしてもう一枚のタオルで、軽く汗を拭いた。


(……何か食べるもの作りたいけど、材料あるかな?)


一度キッチンに戻ってみようと階段を降りていると、玄関からガチャガチャと音が聞こえて、柚希の心臓はビクリと飛び跳ねた。

update 2014.11.25
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