薔薇と宝石の約束



「おい、いつまで寝てんだ!柚希!」

「………………おやすみ。」

「起きろ!!」





jewel.3
〈帰国 3〉







「もー、あんなに大きい声で怒鳴る事ないでしょー?」


身支度を整え、目をこすりながら言う柚希を、隣を歩くコナンは呆れた目で見上げる。


「約束通り迎えに来たのに、寝坊したオメーが悪い。」

「仕方ないでしょ?昨日遅くまで寝れなかったの、新一のせいなんだからね。」

「はぁ?何でだよ?」


訳が分からない、というコナンの視線に、柚希は恨めしそうな顔を見せる。


「昨日……」










『新一、ちょっとこっち来て。』

『なんだよ?』


不思議そうな顔をしながら近付くコナンに手を伸ばすと、柚希はおもむろにコナンの眼鏡を外す。


『…っ?!』


何するんだ、という抗議の視線も気にせず、柚希は楽しそうにコナンの顔を見つめる。


『うわー!昔の新一だっ!!眼鏡ってホント印象変わるよねー!』

『…ったく。おい、そろそろ帰るから眼鏡返…』


《新一ぃー?居るのー??》


『っ!!』


突然玄関の方から聞こえた声に、二人の肩がビクッと反応する。


『もしかして、蘭?』

『おい!早く眼鏡!』


急かすコナンに思い出したように眼鏡を返し、それを掛けた瞬間、ガチャッという音を立ててリビングの扉が開いた。


『あれ、コナン君?!何で新一の家なんかに居るの?』

『ら、蘭ねーちゃん…』

(“蘭ねーちゃん”って!!)


柚希はコナンの言葉に笑いそうになるのを必死で抑えると、蘭に声をかける。


『私が連れてきたの。』

『え?……柚希?!』


死角だった場所からの、予想外の人物の登場に驚いた蘭に、柚希は笑顔で手をヒラヒラさせる。


『蘭、久しぶり!びっくりした?』

『びっくりするわよ!いつ帰って来たの?』

『今日帰って来たばっかり!で、新一も居なくて暇だった所で、阿笠博士の家に入ろうとしてたこのコナン君を見つけてお招きしたの!』


柚希の話に納得したらしい蘭に一安心したコナンは、そのまま話が長くなりそうな2人を見て口を開く。


『ねぇ、蘭ねーちゃん。どうしてここに?』

『え?あぁ、コナン君の帰りが遅いから電話したんだけど出ないし、阿笠博士の所かもと思って買い物ついでに寄ろうとしたら、この家の電気が点いてるのが見えて。もしかしたら新一が帰って来てるのかなって思ったのよ。』


コナンが携帯を確認すると、確かに蘭からの着信が残っていた。


『ごめんね、マナーモードになってて気付かなかったみたい。』

『ううん、大丈夫よ。…あ!もう夕飯の用意しなきゃ!コナン君、帰ろう?』

『うん!』


そんな2人の様子を黙って見ていた柚希は、ハッと我に帰る。


『蘭、気を付けてね。』

『ありがとう。ゆっくり話したいから、夜電話して良い?』

『もちろん!』


そう言って手を振り見送る柚希の足元に、コナンが駆け寄ってくる。


『明日の10時に迎えに来るから、阿笠博士の所に行くぞ。紹介したい奴も居るから。』

『コナンくーん、行くよ?』

『はぁい!じゃーね、柚希ねーちゃん!』


小さな声で要件だけ伝えると、コナンは蘭に呼ばれて走って行った。
衝撃の一言を残して。










「まさかの“柚希ねーちゃん”発言に動揺し過ぎて、中々寝られなくて…」

「……。」

「ちょっと、冗談だよ?…想像以上に子供のふりしてるのはビックリしたけど。」


不機嫌そうに顔を背けたコナンに、柚希はちょっと慌ててフォローする。


「仕方ねぇだろ、蘭はあぁ見えて感が良いし。」

「ごめんってば。でも新一のせいって言うのは本当だよ。夜、蘭から電話で新一の愚痴をずーっと聞かされてたんだから。」

「ハハハ……。」


柚希の視線に渇いた笑いを返し、コナンは阿笠邸のチャイムを鳴らした。

update 2014.10.06
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