薔薇と宝石の約束



「…おい博士、あれ想像出来たか?」

「いや、意外すぎてビックリしてる所じゃ。」


コナンと阿笠博士の驚いた視線の先では、灰原と柚希が並んでPCを弄りながら楽しそうに話していた。





jewel.4
〈帰国 4〉







「おぉ、柚希君!久しぶりじゃの!」

「博士久しぶり!これあげるねっ!」


連絡も入れずにやってきた柚希とコナンを、快く出迎えてくれた阿笠博士にアメリカのお土産を渡すと、慣れた足取りでリビングへ入る。


「博士、あいつは?」

「哀君なら、地下の研究室じゃよ。今呼んで…」

「あら、お客様?」


博士の言葉を遮るように聞こえた、高いが落ち着いた声に柚希が振り返ると、地下室の入り口に白衣を着た茶髪の少女が立っていた。


「灰原、丁度良かった。オメーを紹介したい奴がいるんだ。」

「私を?」


不思議そうな灰原に構わず、コナンは柚希の方に向き直る。


「柚希、こいつは灰原哀。博士んちに住んでて、俺と同じ帝丹小に通ってんだ。」

「へぇ!はじめまして、工藤柚希です。」

(……ん?)


笑顔で名乗る柚希に、コナンは僅かな違和感を感じる。


「工藤?もしかして…」

「新一の妹です。いつもこの愚兄がお世話になってます。」

「!!」


“灰原は正体を知っている”とはまだ一言も言っていないのに、当然のようにそう答える柚希に、コナンと博士は目を見開く。


「お、おい!いきなり何言ってんだ!」

「え?」

「え?じゃねぇ!!正体知ってるかどうかも分からないうちにそんな事…」


何を驚いているのか分からない、といった様子の柚希にコナンが思わず怒鳴ると、灰原が口を挟む。


「工藤君。この子、分かって言ってるわよ。」

「え?」

「だから敬語なんでしょう?」


コナンがポカンとするのも気にせず、灰原は柚希に聞く。


「はい。だって新一が話してくれた、“組織から逃げて来た薬の開発者”ってあなたの事ですよね?元の年齢までは分からないけど、きっと私よりは上だろうと思ったので。」

「ま、取りあえず座って話しましょうか。」


きょとんとしてそう答える柚希に、灰原はフッと笑みを零すと、ソファへ促した。










「それじゃあ、柚希君の学校の手配はすぐ済ませるよ。明後日の月曜から通えるじゃろ。」

「え、そんなすぐに用意出来るの?ありがとう、博士。」


改めて灰原の事を詳しく話し、柚希の今後の事を博士に頼むと、早速手続きをするべく博士が立ち上がる。

そしてコナンはその博士の後を追いかけた。


「それにしても、柚希君には驚かされるのう。」


コナンと2人になった所で博士がそう言うと、コナンも頷く。


「あぁ。俺の前例があるからって、“白衣着て研究室から出てきた大人びた子”って条件だけで、俺が話した薬の開発者が幼児化したと悟り、しかも自分より年上だろうからって敬語だもんな。」

(どおりで子供に対する“かがんで優しく話しかける”様な素振りがなくて違和感があった訳だ…)


「元々頭の良い子じゃが、君に負けず推理力もあるようじゃな。」


そう博士が言うと、コナンは少し苦笑いする。


「あいつの場合は、推理したつもりなくケロッと当然の様に言ってくるから、その度に驚かされるよ。」


それを聞いた博士が笑っていると、コナンは思い出したように急に真剣な顔になる。


「そんな事より!あいつに俺の事話したの、博士だろ。」

「し、仕方なかったんじゃよ…。蘭君から、新一と全然連絡が取れなくなってしまったと聞いたらしく、電話で“絶対何か巻き込まれてるハズだ”と問い詰められてしまってのう。」


責めるように言うコナンに、博士が慌てて弁解すると、コナンはため息をついた。


「巻き込みたくなくて連絡しなかったけど、まぁいずれバレてたか…。博士、あいつにも、もしもの時に身を守れるように何か作ってやってくれねぇか?」

「分かった。考えておこう。」


そこまで話した後、博士はテキパキと柚希の学校の手続きや制服の手配をする。

それも終わり2人の所に戻ると、その場の様子にコナン達は足を止めた。


「…おい博士、あれ想像出来たか?」

「いや、意外すぎてビックリしてる所じゃ。」


PCを前に楽しそうに灰原と喋っていた柚希は、2人に気付くと椅子から立ち上がる。


「あ、新一!私これから哀と出掛けてくるね。」

「え?!あ、あぁ、何処行くんだ?」

「柚希の部屋を探してたんだけど、間取り以外は実際見ないと分からないし、いくつか回ってくるわ。」

「いってきまーす!」


色々驚くことが多すぎて、若干固まっているコナンも気にせず、2人は出掛けて行った。


「まさか哀君が短時間であんなに打ち解けるとはのう。」


コナンと博士は、しばらくの間2人が出て行った玄関を見つめていた。

update 2014.10.07
MAIN  小説TOP  HOME