薔薇と宝石の約束




「わぁ!私大吉!」


園子達に連れられ神社にお参りに来た柚希が、蘭の声に振り向いて手元を覗き込むと、はっきりと書かれた大吉の文字が目に入る。


「ホントだー!」

「待ち人…恋人と再会します。」

「それって新一君の事じゃない?」


園子の言葉に、蘭が心なしか頬を赤くする。


「へぇ、良かったやん!今度あたしにも会わしてぇな!」

(再会って、毎日会ってるんだけどね…。)


柚希が内心そう呟いてコナンの方を見ると、何やら難しそうな顔で考え込んでいる。


「和葉!お前そこの3人案内したりや。」

「平次は?」

「俺はこのちっこいの案内するから。」


平次の言葉に蘭が不思議そうな顔をする。


「どうして?一緒に行こうよ。」

「男は男同士がええんや。なぁ?コ…コ……コナ…コナンくん?」

「うん!」

(平次君、どもり過ぎだって……。)


何やらコソコソと話している2人を見ながら、柚希は思わず呆れたように溜め息をついた。


「何か、妙に仲良いのよね、あの2人。」

「まぁ、コナン君は新一から色々推理の話とか聞いてるみたいだし、そういう意味で話が合うんじゃない?」

「そうそう!女は女同士、何か食べながら話そうよ。柚希には聞きたい事がいっぱいあるんだからっ!」


園子の怪しげな表情に柚希が思わず一歩後ずさると、あろうことか蘭までも追い討ちを掛ける。


「そうよ、彼の事詳しく教えてもらうわよ?」

「何なに?柚希ちゃん、良い人でも()るん?!」

「……話すから、3人ともちょっと離れて……。」




jewel.31
〈痛む心が壊れる前に 6〉







「お前、12番目の文字が引っ掛かってんのやろ?」

「あぁ。Lがロシア語のアルファベットのカー、つまり英語のKなら分かるんだが。」

「それやと、時計の形にはならへんな。」


神社を出て歩く2人は、予告状の意味を考えながら真剣な表情で考える。


「ちゅーか、本当は柚希も連れてくれば良かったんやけど…流石にあそこで柚希だけこっちにって訳にはいかんからなぁ。」

「は?何で柚希が居た方が良いんだよ?」

「そらお前の妹なんやし、普通の子より頭回るんやろ?それよりビックリしたで!苗字は意識しとらんかったし…。何で言わんのや?」

「俺はてっきり知ってるかと思ってたぜ。こっちは大会の後、柚希からお前の話を聞いてたしな。最も、柚希も俺から聞いた探偵の服部と同一人物だと思ってなくて、さっき気付いたみてえだけど。まぁ兎に角、アイツは確かに細かい事に気付いたりはするけど……キッドには関わらせたくねぇんだよ。」


コナンの低い声に平次は訝しげな顔をするが、少し考えてから空気を変えるように明るい声を出す。


「それよりお前、さっき引いたおみくじどうやった?」

「んなもん、まだ見てねーよ。」

「何でや?キッドとの対決を占う大事なおみくじやろ?!」

「…ったく。」


面倒そうにポケットから出したおみくじを開くと、平次が覗き込んでくる。


「小吉か…中途半端なもん引きよったな。
これやと勝つか負けるか分からんやないか。」

「旅行…秘密が明るみに出ます、やめましょう?!」

「ここのおみくじ、よぉ当たるからなぁ。」


コナンがまさか蘭に秘密がバレるのかと内心焦っていると、平次は追い討ちを掛けてニッと笑った。










「そういや柚希ちゃん、おみくじどうやったん?」

「え、まだ見てないけど…。」


カフェで散々快斗の事を聞かれた後、夕ご飯を食べに入った店でふと聞かれた言葉にケロッとそう言うと、3人が信じられないというように詰め寄ってくる。


「どうして見ないのよ!普通気になるでしょうが!」

「せやせや!その場で見るんが普通やで!」

「そういう所は新一とそっくりだよね。」


何でこんなに責められてるんだ、と思いつつも、柚希はポケットからおみくじを出して広げる。


「えっと…末吉だって。」

「末吉って…何か微妙そうね。」


柚希が言うのと同時に覗き込んだ園子が、残念そうに言う。


「ううん。末吉って確か、意外と良い結果だったと思うけど。」

「蘭ちゃんの言う通りやで。末広がりで未来が良くなるゆう意味やから、吉の中での順番は下やけど悪いもんではないんよ。」

「そうなんだ、ありがとう。」


和葉の言葉に満足そうにおみくじを仕舞おうとする柚希に、3人のえっ!という声が重なる。


「な、何?」

「何ってあんたねぇ、せっかく開いたんだから下も読みなさいよ…。」

「あぁ、なる程。」


もう一度おみくじを開くのを見て3人が顔を見合わせながら苦笑いする。


「まずは恋愛運やね!」

「いきなりそこから?……えっと、“想い人に難あり、ただ信じて待つべし”………。」

「……だ、大丈夫よ柚希。“信じて待つべし”って事はきっと、問題は起きるけど大した事じゃないって事よ。」

「ありがとう蘭。大丈夫、気にしてないよ。」


柚希がニコリと笑うと、蘭は安心した表情を見せる。


「よし、まだキッド様の予告まで時間はたっぷりあるし、何処かパーッと遊びに行こう!」

「ねぇ、そう言えばどうして予告時間が3時なの?」


博物館で聞きそびれたのを思い出してそう聞くと、園子は何故か得意気に説明しだす。


「アルファベットの12番目の文字がLでしょ?時計の針が3時を刺した時に丁度…って柚希?!」

「ごめん先に帰ってて!」


話の途中で立ち上がり走り出した柚希を、3人は驚いて見送るしかなかった。

update 2014.12.19
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