「西野さん、部屋の電気を消してもらえますか?」
柚希の言葉に全員が不思議そうにする中、手にした鏡を見せるようにしながらコナンに声を掛ける。
「コナン君。ライト、貸してくれる?」
(……!!なる程…)
意味ありげな笑みで言う柚希を一瞬見つめてから、言いたい事に気付いたコナンは、分かった!と言って腕時計のライトを点けた。
jewel.35
〈痛む心が壊れる前に 10〉
暗くなった部屋の中、柚希が手にした鏡にコナンがライトを当てると、反射した光が部屋の壁を照らす。
「!!」
「あ……」
「っ?!」
全員が目を見開いた視線の先では、光の中に大きな城の絵が映し出されている。
「ど、どうして絵が…?」
「魔境だよ。」
セルゲイの疑問に答えた乾に、青蘭が思い出したように声を上げる。
「聞いた事があるわ!鏡を神体化する日本と中国にあったと…。」
「そう。鏡に特殊な細工がしてあってな、日本では隠れキリシタンが、壁に映し出された十字架を密かに祈っていたとされている。」
話を聞きながら城を見つめていた夏美は、沢部に声を掛ける。
「沢部さん、このお城…。」
「はい!横須賀のお城に間違いありません!」
「え…?横須賀のお城って、あのCM撮影とかに良く使われる?」
「あ、見たことあるかも…。」
蘭と柚希が沢部の言葉に反応すると、夏美がそれを肯定する。
「はい、元々曾祖父か建てたもので、祖母がずっと管理してたんです。」
「じゃあ、あれは香坂家のお城だったんだ!」
(園子の家もお城持っててもおかしくなさそう…)
柚希が園子を見てボンヤリ考えていると、小五郎が真面目そうな顔で話し出す。
「夏美さん、2つのエッグは、あなたのひいおじいさんが作ったものじゃないでしょうか?」
小五郎は、夏美の曾祖父である喜市が、ロシア革命の後に2つのエッグを夫人と共に日本に持ち帰り、今此処にあるエッグに付いていた宝石を売ったお金で横須賀の城を建て、そこにもう1つのエッグを隠したのだと主張した。
「そして、城に隠したというメッセージを、魔境という形でこのエッグに残したんですよ!」
「あの、実は…。」
夏美がバックから取り出したのは大きな古い鍵。
「図面と一緒にこの鍵もあったのですが、これも何か…?」
「それこそ、2個目のエッグを隠してある場所の鍵に違いありません!」
自信満々に小五郎が言い放つと、セルゲイ達がざわつく。
「宝石の付いた、幻のエッグ…。」
「もしそれが見つかったら、10億……いや、15億以上の価値があるぞ!!」
乾の言葉にコナンは考えるように難しい顔をする。
(だからキッドが狙ったのか?………いや…)
「毛利さん、東京に戻ったら、一緒にお城へ行って頂けませんか?」
「良いですとも!」
「私も同行させて下さい!」
「俺もだ!」
「頼む!ビデオに撮らせてくれ!」
「私も是非!」
目の色を変えて寄ってくる4人に、余程人が良いと見えて夏美は疑いのない笑顔で一緒に行きましょう!と答える。
コナンはそんな怪しげな笑みを浮かべる彼らを疑わしげな視線で見つめていた。
「うん!出血は止まったし、傷口さえ塞がればまた飛べるようになるわ!」
「本当?良かった!!」
広い船であてがわれた個室で、蘭がキッドの鳩の包帯を交換すると、そう言って籠の中に敷き詰めた柔らかい布の上にそっと降ろした。
「服部君も幸い軽い捻挫で済んだけど…キッドは死んじゃったのかなぁ…。」
(奴があんな事で死ぬ訳がない。それに……)
−−コンコン!
「はーい!……え?」
蘭が扉を開けると、目の前にはビデオカメラを構えた寒川の姿。
「いーねぇ、その表情。いただきぃ!」
(何なんだ一体……)
さっさと去って行く寒川の後ろ姿に、コナンが呆れた目をしていると、後ろから声が掛かる。
「遊びに来たよ!」
「園子、柚希!夏美さんと西野さんも、どうぞ!」
ゾロゾロと部屋に入ると、さっきまで大人しかった鳩が突然バサバサと翼を動かす。
「あっ!?僕、やっぱり遠慮します!」
部屋に入りかけていた西野が慌てて部屋を出て行くと、みんな不思議そうな顔をする。
「そっかぁ、美女ばっかりだから照れてんだ。可愛いー。」
園子がそんな事を言っている間に、柚希は変わらず羽を動かす鳩に近づくと、そっと手を差し出す。
すると、途端に大人しくなった鳩は、まるで気持ち良いと言わんばかりの瞳で柚希に撫でられていた。
「もう1人の美女忘れてた!呼んでくるね!」
「うん、青蘭さんね!」
柚希に声を掛けようとした所で突然手を取られたコナンが驚いて見上げると、園子がそのまま扉の方へ引っ張って行く。
「行くぞ、おチビちゃん!」
「僕も行くのっ?!」
問答無用で引っ張る園子にコナンが諦めるのは5秒も掛からなかった。
update 2015.01.09