薔薇と宝石の約束


柚希からの合図で頼れない事を悟ったコナンは、どうにか自力で真相を気付かせるしかないと諦める。


「ねぇ、西野さんと寒川さんって知り合いなんじゃない?昨日美術館で寒川さん、西野さんを見てビックリしてたよ!」

「ホントかい?」


西野がエッグを持ってきた時の寒川の反応に、コナン以外誰も気付いていなかったようで、本人も驚く。


「西野さんってずっと海外を旅して回ってたんでしょ?きっとその時、どこかで会ってるんだよ!」


その言葉にしばらく考え込む西野だが、何か思い出したのか突如大きな声を上げた。





jewel.40
〈痛む心が壊れる前に 15〉







「知ってるんですか?寒川さんを!」


目暮の問いに西野ははい、と言って話し始める。


「3年前にアジアを旅行してた時の事です。あの男、内戦で家を焼かれた女の子をビデオに撮ってました。注意してもやめないので、思わず殴ってしまったんです…。」

「じゃあ寒川さん、西野さんの事恨んでるね、きっと。」


それがどういう事か、考えれば分かるだろうと思ったコナンのヒントに、小五郎がわかった!と声を上げる。


「西野さん、アンタがスコーピオンだったんだ!」

(おいおい……)

「毛利くん、それは羽毛の件で違うと分かったじゃないか。」

「あ、そうでした…。」


目暮に言われて視線を逸らす小五郎に呆れつつ、コナンはもっと分かりやすいヒントを出す事にする。


「でも西野さん助かったね!だってもし寒川さんがスコーピオンに殺されてなかったら、西野さん指輪泥棒にされてたよ。」

「ん?待てよ……そうか!この事件、2つのエッグならぬ、2つの事件が重なっていたんです!」

(…新一、思った以上に苦労してるんだなぁ。)


やっと真相に気付き話し始める小五郎に、柚希は思わず同情の視線をコナンに送ってしまう。


「1つ目の事件は、寒川さんが西野さんをはめようとしたものです。彼は西野さんに指輪泥棒の罪を着せる為、わざと皆の前で指輪を見せ、西野さんがシャワーを浴びている間に部屋に侵入し、自分の指輪をベッドの下に隠したんです。そしてさらに彼のボールペンを盗り、西野さんに罪を着せようとした。ところが、その前に第2の事件が起きたんです。」


小五郎の説明に、室内の視線はさらに集中する。


「寒川さんはスコーピオンに射殺された。目的はおそらくスコーピオンの正体を示す何かを撮影してしまったテープと指輪。しかし、首から下げていたはずのネックレスが見当たらないので、スコーピオンは部屋中を荒らして探したんです。」

「すごいや、おじさん!名推理だね!」


わざと賞賛するコナンに、小五郎は得意気に胸を張る。
その様子に柚希は心の中で苦笑していた。


「…と言う事は、スコーピオンはまだこの船の何処かに潜んでいるという事か?!」

「その事なんですが…救命艇が1艘なくなっていました。」

「何っ?!」


船を見回った際に気付いた事を報告する白鳥の言葉に、スコーピオンは船から逃げたという流れの話になる。
しかし、本当に逃げたのかと思案する様子のコナンを見ながら、柚希も難しい顔をする。


(そう思わせて、まだこの中にいる可能性だってある……けど、スコーピオンを見つけるには、あの城に着いて行くしかない)


そんな事を考えていると、スコーピオンが居なくなって安心したと口々に言う面々に、白鳥がしかし、と話し出す。


「スコーピオンがもう1個のエッグを狙って、香坂家の城に現れる可能性はあります。いや、もう既に向かっているかも。」


そこまで言って、白鳥は目暮の方に向き直る。


「目暮警部!明日、東京に着き次第、私も夏美さん達と城に向かいたいと思います。」

「分かった!そうしてくれ!」

「おい、聞いた通りだ。今度ばかりは、絶対連れて行く訳にはいかんからな!」


コナンに向かって言い聞かせる小五郎だが、白鳥にコナンくんも連れて行きましょう、と言われ目を見開く。


「彼のユニークな発想が、役に立つかもしれませんから。」

「だったら、私も行きます。」


突然口を挟んだ声に、皆驚き振り返る。


「柚希ちゃんまで何言ってるんだ!」

「そうですよ。危険ですから、柚希さんは…」

「危険なら、コナンくんも一緒ですよね?勝手に動いたりはもちろんしませんし、私がコナンくんを引き受ければ、おじさんも楽でしょう?」


小五郎と白鳥が止めるが全く引く気のない柚希に、折れたのは大人の方で、結局コナンと柚希が行くなら、と蘭まで行く事になった。


(出来ればそんな危険な所、柚希が行かないで済むのが一番だったけど……俺が何が何でも守ってやる)


白鳥に変装した快斗は、表面に出さないようにしながらも握り締める手に力が籠もった。

update 2015.02.01
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