薔薇と宝石の約束




「ねぇ柚希ねーちゃん、本気なの?」

「何が?」


東京に到着し船から降りる時、人前だからとコナンは子供モードで問いかける。


「何がって、本当に一緒に行く気なの?危険だよ。」

「本気だよ。危険なんて関係ない。私には…理由があるの。」

「柚希ねーちゃん…?」


無表情で、そして感情の感じられない声に違和感を感じるが、その直後に柚希は一歩先へ進むと笑顔でコナンに振り返る。


「大丈夫、コナンくんは私が守ってあげるから!」

「……。」


冗談ぽくそう言って再び前を向いた柚希を、コナンはしばらく見つめていた。





jewel.41
〈痛む心が壊れる前に 16〉







「ったく、頭にくるよな!コナンのやつ!」

「ホント!大阪に行ったきり、全然連絡して来ないんだもん!」

「少年探偵団の一員という自覚が無いんですよ、彼は!」


元太、歩美、光彦の3人は、コナンへの愚痴を口々に言いながら、灰原を遊びに誘う為に博士の家へと歩いていた。

門の前に、普段は出ていないビートルが置いてあるのを見て不思議に思っていると、灰原の声が聞こえて3人は壁に隠れるようにして覗き込む。


「博士、まだ見つからないの?免許証…。」

「確かこの辺に置いたんじゃがのう…。」

「早くしないと江戸川くん達、先に着いちゃうわよ。」


そう言って探すのを手伝いに家に入る灰原の後ろで、3人は何か企んだ笑みを浮かべていた。





「いやぁ、哀くんは探し物を見つけるのが上手いのぉ!」


やっと免許証を見つけた博士と灰原が車で走り出した時、後部座席の気配に気付いた灰原が静かに博士に告げる。


「どうやら、もう1つトラブルが見つかったみたい…。」

「ん…?」

「「イエーイ!!」」

「わっ!!」


突然姿を表した探偵団の3人に驚いた博士は、ハンドル操作を間違えそうになりながらも何とか立て直す。
時間も押しているため今から戻る訳にもいかず、3人を乗せたまま先を急ぐ事になった。










港から城へは、白鳥の運転する車とタクシーに別れて移動する事になった。
タクシーには助手席にセルゲイ、後部座席に小五郎と蘭、コナンを膝上に抱えた柚希が並んでいる。


「毛利さん、寒川さんの指輪、本当にマリアの物だったんでしょうか?」

「一応、目暮警部が預かって、鑑定に出すって言ってましたけど…。」


小五郎がそう言うと、セルゲイは後ろを振り返りながらマリアの説明をする。


「マリアというのは、4人姉妹の中でも一番優しい子で、大きな灰色の瞳をしていたそうです。」


(灰色の瞳?)

「夏美さんや青蘭さんと一緒だね?」


コナンの耳元で柚希が囁いた言葉に、同じ事を考えていたコナンは声に出さず頷く。


「ロシア革命の後で、皇帝一家が全員銃殺されたのはご存知と思いますが、マリアと皇太子のご遺体だけは、確認されてないんです。」

「そうなんですか…。」


話が途切れた所で、コナンがずっと気になっていた事を口にする。


「ねぇ、柚希ねーちゃん熱でもある?何となく体が熱い気がするんだけど…。」

「え?」

「嘘、熱があるなら休んでなきゃ!」


コナンの言葉に驚いた蘭は、柚希の額に手を当てる。


「平気でしょ?」

「うん…取りあえず、特別熱くは無いみたい。でも、調子悪くなったりしたらちゃんと言ってね?」

「うん、ありがと。」

(でも確か、柚希の平熱って……)


ケロッとした顔をした柚希を見ながらも、コナンが考えていると、見えてきた城の姿に話が移ってしまった。





「わぁー!ホントに綺麗なお城!」

「撮影に使われるのも納得だね。」


車を降りて蘭と柚希が感嘆の声を上げていると、白鳥が横に立つ。


「ドイツのノイシュバン・シュタイン城に似てますね。シンデレラ城のモデルになったと言われてる…。」

(あれ?そう言えば、どうしてドイツ風の城なんだ?夏美さんのひいおばあさんはロシア人なのに…………っ!?)


遅れてやってきた博士のビートルから降りてきた予定外の人物達に、コナンは目を見開く。


「よぉ!コナン!」

「元気ですかー?」

「あ!柚希お姉さんも居る!」


嬉しそうに言う歩美に向かって柚希は手をひらひらと振る。


「博士、どうして此処へ?」

「いや、コナンくんから電話をもらってな。ドライブがてら来てみたんじゃよ。」


白鳥にそう言ってから、博士はこっそりとコナンに何かを渡した。


(…眼鏡?何か改良してもらったのかな?)


コナン達の様子を見ながら考えていると、足元から声が掛かる。


「柚希。」

「哀も来たんだね。」

「あなた、何かあったの?ひどい顔よ。」

「え?!」


思わぬ事を言われた柚希は、驚いた顔で灰原を見つめる。


「や、嫌だなぁ…一応お手入れはしてるんだけど…」

「誤魔化しても無駄。全然笑えてないわよ。ま、実際気付いてる人は少なそうだけど…?」


返した言葉もすんなり否定され、柚希は困ったように眉を下げた。

update 2015.02.04
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