薔薇と宝石の約束




絶対に許さない…

例えこの中の誰かが犯人だとしても…




…絶対に。





jewel.44
〈痛む心が壊れる前に 19〉







「ダメです!ここも鍵が掛かってますよ!」

「クソォ!グズグズしてたら先に宝を見つけられちまうぞ!」


探偵団の面々は、正面以外の入り口から城に入ろうとあちこちの扉を確かめるが、何処も鍵が掛かっていて入れそうにない。


「おーい、哀くん!何処へ行くんじゃ?」

「あの塔を見てくるだけ。」


一人違う方へ歩いて行く灰原を追いかけると、階段を下った先に小さな塔が建っている。


「灰原ーっ!何かあんのか?あそこに!」

「宝よ、きっと!」


言いながら灰原の横をすり抜け駆けていく3人は、目を輝かせながら扉を開く。
しかし、中に入ってもただガランとした空間が広がるのみで、宝が有りそうな様子はない。


「あれ…?何だよ灰原、何もねーぞ!」

「何か有るなんて言ってないわよ。」

「おーい!もう諦めて帰った方が……………わぁーっ!」


やっと追いついた博士が、息を切らしながら壁に手を付くと、突然手を付いた部分の石がボコッと音を立てて奥へ押し込まれた。
それと同時に塔の中の床が抜け、叫び声と共に4人は穴へと吸い込まれる。


「た、大変じゃあ!!」


4人が消えた穴を覗き込んだ博士は、慌てて車へと走り出した。





「痛えなオマエら…。」

「柔らかいお腹ですね。」

「怪我しないで済んだわ!」


4人はかなりの距離を落ちたものの、元太の上に落ちたお陰で誰にも怪我はなかった。

ふと、側にある細長い物に気付いた元太が、蛇だと騒ぎ出すと、灰原が冷静にライトでそれを照らす。


「蛇じゃないわ…縄梯子よ。かなり古いわね。元々上の方から付いてたのが切れたみたい…。」

「チェッ!脅かしやがって!」

「どうする?ここで博士が助けに来てくれるのを待つ?それとも…先へ進む?」


そう言って灰原が照らした先には、奥へと続く通路がある。


「そりゃ……」

「もちろん……」

「「「レッツ、ゴォー!!」」」


嬉しそうに声を揃えて叫ぶ3人を見て、灰原は柔らかく笑った。










隠し階段を下った先の真っ暗な道を、懐中電灯で照らしながら一歩一歩進む中、セルゲイが夏美に話し掛ける。


「それにしても夏美さん、どうしてパスワードが“世紀末の魔術師”だったんでしょう?」

「多分、曾祖父がそう呼ばれていたんだと思います。曾祖父は、1900年のパリ万博に16歳でからくり人形を出品し、そのままロシアに渡ったと聞いています。」

「なるほど…1900年といえば、まさに世紀末ですな。」


そんな話をしていると、ふとコナンが立ち止まり横の通路を見つめる。


「どうしたの?」

「今、かすかに物音が!」

「スコーピオンか?!」


小五郎の言葉に、柚希はピクリと反応する。


「僕見てくる!!」

「私も!」

「コナンくん!柚希!」


ほぼ同時に走り出した2人を蘭が追おうとすると、それを白鳥が手で制した。


「私が行きます!毛利さんは皆さんと此処に居て下さい!」

「分かった!」


小五郎の返事を聞くや否や、白鳥に扮した快斗は全力で走り出す。


(柚希……頼むから危険な事はしないでくれよ!)





「…ん?」


白鳥が2人を追い掛けた後、乾は自分の後ろで人の動く気配を感じ、そちらに歩き出す。
聞こえていた足音が消え、立ち止まったであろう曲がり角の先を覗き込み、懐中電灯で照らす。


「ア、アンタ…!?」


サイレンサーを着けるのを目撃されたその人物は、躊躇無くその銃口を乾に向けた。










物音が聞こえた方に走り出したコナンは、すぐ後ろに着いてくる柚希にチラッと視線を向ける。


「…柚希っ、変な事考えるなよ?」

「変な事って何っ。無駄話してる場合じゃ、ないでしょっ。」


走るペースは変えずに紡いだ言葉は、さらりと交わされる。
確かに言うとおりではあるが、コナンは地下に降りてから特に違和感のある柚希の様子に不安が募る。
再び口を開こうとした時、懐中電灯の光が4つの姿を捉えた。


「ああっ!お前ら!」

「コナンくん!柚希お姉さん!」

「…ったく。」


目の前に現れた少年探偵団の姿に柚希が目を丸くして驚いていると、後ろから来た白鳥が追い付く。


「…君達、どうして此処に?」

「城の周り探検してたら、急に落ちちまったんだよ!」

「少し下った所に小さな塔があって、そこが入り口になってたみたいです。」

「もう登れないから皆で奥に進んでたのよ!」


悪びれた様子もなく無邪気に言う彼等に、白鳥もコナンも苦笑する。
すると、今まで黙っていた柚希が口を開いた。


「哀ちゃん、此処までに分かれ道はあった?」

「いいえ、1本道よ。」

「誰かに会ったりは?」

「してないわ。隠れられそうな場所もなかったし。」

「そう。じゃあこっちにスコーピオンは居ないと思って良いみたいだね。行こう。」


素っ気なく言うとさっさと元の道を戻る柚希。
ニコリともしないその様子に、子供達さえも不思議そうな顔をしていた。

update 2015.02.19
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