薔薇と宝石の約束




「な、何だこりゃ?!道が塞がれてる!」


コナンと白鳥が犯人と柚希を追いかけて行った後、元来た道を戻ろうとしていた小五郎達は、青蘭の手榴弾によって塞がれた道を見て驚く。


「えぇーっ!?」

「それじゃ俺たち、出られないのか?」

「みんな、私について来て!」

「あぁ?」


子供達が不安そうな声を出すと、灰原がハッキリとした口調でそう言うが、小五郎は不満げに振り返る。


「いいから、ついて来なさいって言ってるのよ!」

「は、はい……。」





jewel.49
〈痛む心が壊れる前に 24〉







目の前に現れた予想外の人物に青蘭が驚きを隠せないでいると、コナンが口を開く。


「僕1人だよ。」

「何っ?!」

「これ、蝶ネクタイ型変声機って言ってね…色々な人の声が出せるんだ。」

「お、お前…一体……」


焦る青蘭の声に、コナンはニヤリと笑う。


「江戸川コナン…探偵さ!」

「!?」

「寒川さんを殺害したのは、アンタの正体がバレそうになったからだ。寒川さんは人の部屋を訪問しては、ビデオカメラで撮っていたからね。咄嗟の事で裏返すのを忘れた、裏にグリゴリーと書かれたあの写真…それは恋人の写真なんかじゃなく、グリゴリー・ラスプーチンの写真だった!」

「なる程…私はその写真を見てないし、コナン君もグリゴリーを英語表記の“Grigorii”で意識してた。だからロシア語表記の“ГРИГОРИЙ(グリゴリー)”のГ(ゲー)で書かれた、喜市さんの部屋のゲー・ラスプーチンのサインを見てもお互いピンと来なかったって訳ね。」


捕まっているにも関わらず平然と喋る柚希に、青蘭が首もとの締め付けと銃口を押し付ける強さを強くすると、柚希はふぅと息を吐いて両手を軽く上げ、大人しくする意思を示す。


「寒川さんにラスプーチンの写真をビデオに撮られたと思ったアンタは、彼を殺害しに行った。そうだろ?青蘭さん……いや、スコーピオン!」

「ふ…良く分かったねえ、坊や。」

「乾さんを殺したのは、その銃にサイレンサーを付けている所でも見られたってとこかな?」

「おやおや、まるで見ていたようじゃないか。」


コナンは表情を厳しくすると、話を続ける。


「でも、おっちゃんを狙ったのは、ラスプーチンの悪口を言ったからだ!」



−−お父さん、ラスプーチンって?

−−い、いや、俺も世紀の大悪党だったって事位しか…。



「そして、蘭の命まで狙い、柚希を人質に取った!」

「お喋りはそのくらいにしな!可哀想だけど、アンタとこの子には死んでもらうよ!」


そう青蘭が声を上げた途端、俯いた柚希の肩が小さく揺れる。


「な、何がおかしいっ?!」

「申し訳ないけど……私はいつまでも人質でいるつもりも、ましてや殺される気もないの!」

「ぐっ!」


勢い良く肘を後ろに突き出し青蘭の鳩尾辺りにダメージを与えると、腕が緩んだ瞬間にするりと抜け出し間合いを取り、同時に手にした携帯ブレードを振り下ろして長さを伸ばした。


「この小娘っ!」

「柚希っ!!」


柚希に向けられた銃口にコナンが叫ぶが、その瞬間に見た柚希の表情にハッとする。
スッと細められた鋭い目と纏った殺気は、かつて剣道の試合で見たものを遥かに凌いでいた。


−−ガウンッキィンッ!!


「な……何をしたっ?!」


確実に柚希に向かって発砲したはずにも関わらず、その場から動かず無傷な様子に青蘭は目を見開き、コナンも驚いて柚希を見つめている。


(じ…銃弾を振り上げた剣で弾きやがった…)

「何をした?まさか、私の動きすら見えないとはね…。ライフルなら兎も角、拳銃の速度なら…十分“読める”。」

「っ!!」

「その銃、ワルサーPPK/Sだね。」


挑発するような柚希の言葉に、コナンは自分に青蘭の意識を向けるように声を上げた。


「マガジンに込められる弾の数は、8発。」

「…ん?」

「乾さんとおっちゃん、蘭に1発ずつ…今のを含めてここで5発撃ったから、弾はもう残ってないよ。」

「ふ…良いこと教えてあげる。あらかじめ銃に弾を装填した状態で8発入りのマガジンをセットすると、9発になるのよ!つまり、この銃はもう1発、弾が残っているってこと!」


口元に笑みを浮かべながらコナンに銃口の先を向けた青蘭の言葉に、コナンはたじろぐ様子もなく口を開く。


「じゃあ撃てよ…。」

「!?」

「…本当に弾が残ってんのならな。」

(…新一が博士から受け取ってた眼鏡……そういう事か。)


コナンの言葉に、城に着いた時に見た様子を思い出し、何を考えているのか気付いた柚希は、黙って見守る。


「…バカな坊や。望み通り先に逝かせてあげる!」


−−ガウンッ


放たれた銃弾は、真っ直ぐコナンの右目に向かって行った。


−−キィンッ!

「ど、どうして!?」


特別な硬質ガラスのおかげで、衝撃は受けたものの無傷で立っているコナンに青蘭が驚いている隙に、コナンはキック力増強シューズのスイッチを入れる。
慌てて替えのマガジンをセットする青蘭に向かって、柚希は素早く走り出した。


「させないっ………っ!?」


青蘭との間合いを詰めてブレードを構えた瞬間、柚希は全身の力が抜けたように崩れ落ちた。

update 2015.03.12
MAIN  小説TOP  HOME