「「「ジャーンケーン、ポンッ!!」」」
真剣な顔をして勝負をする子供達。
そのうち2人は決して乗り気では無さそうだったが。
jewel.66
〈兄妹喧嘩 2〉
「やったー!歩美の勝ちだよっ!」
「俺もチョキだぞ!」
「元太くんは無理って、最初に決まったじゃないですか。」
喜ぶ歩美の横でつまらなそうに顔を背ける元太を見て、柚希は側に歩いて行く。
「元太くん、ジャンケンに買ったご褒美に、夕ご飯のカレーは大盛りにしてあげる。」
「ホントかっ?!」
あっと言う間に笑顔になった元太にしっかり頷くと、じゃあ行こうかと車へと歩き出した。
キャンプ場へ向かう途中、休憩に寄った店の駐車場で行われたジャンケン大会は、車内での柚希の膝の上という特等席の争奪戦。
元太を膝に乗せ続けるのはさすがに厳しいのと、横幅の関係で元太は助手席に固定、後部座席に柚希と子供達3人が並び、もう1人が柚希の膝の上と決まったのだった。
ちなみに出掛ける際のジャンケンでは灰原が勝ち、悪いわねと言いつつも何処か嬉しそうに見えたが、怒られないように口に出す事はなかった。
「じゃあ博士と灰原が夕食の準備、俺と柚希ねーちゃんはテントの準備をするから、オメーらは薪拾いを頼むぜ。」
「「「はーい!!」」」
元気に返事をすると早速森へと駆け出して行く様子に、柚希はコナンを振り返る。
「ねえ、あの子達だけで平気なの?」
「薪拾いは慣れてっから心配いらねえよ。遠くまでは行くなって言ってあるしな。」
「そう?」
煮え切らない返事をしながらも荷物を開けるコナンの所へ近づくと、柚希は目を見開いた。
「このテントって…。」
「どうかしたか?」
「…これ、数秒で設営出来るタイプに見えるんだけど?」
柚希の目に入ったテントは最新型の物で、確か放り投げるだけで瞬時に設営可能なのが売りだったはずだ。
「あぁ、博士が臨時収入が入ったからって、全部買い換えたらしいぜ。」
「そうじゃなくて…これならテントの準備に私達2人も要らないでしょ?」
「何言ってんだよ。時間が掛からねえからこそ、オメーと組んだに決まってるじゃねーか。」
そう言ってコナンはテントの1つを放り投げ、柚希に向かってニヤリと笑みを零す。
「ゆっくり話そうじゃねーか、柚希ちゃん?」
呼ばれた事など無いに等しい“ちゃん”付けに、柚希は身の毛がよだつのを感じた。
「哀くん、何だかテントの方から嫌な空気が漂っておるような気がするんじゃが…。」
「しばらく放っておいた方が良いわよ。何かあったとしても、結局はただの兄妹喧嘩に過ぎないわ。」
呆れたような声で言った灰原が一瞬テントの方へ視線を向け、すぐにまな板の上の野菜へと意識を戻したのと反対に、博士は不安そうにテントの方を見つめていた。
(あの2人、小さないざこざはあっても、マトモに兄妹喧嘩なんてした事無いんじゃないかのう……きちんと仲直り出来れば良いんじゃが…)
残り2つのテントもあっと言う間に準備が終わり、その中の1つに押し込まれた柚希は、目の前に座るコナンから連絡しなかった事を叱られ、さらにキッドに関するしつこい程の質問に、苛つきながらも尽くしらを切っていた。
「だから、何でキッドの心配したからって、私達が関係ある事になるの?」
「関係ない奴の事で、あぁまで取り乱す訳ねえたろうが!」
「さっきも言ったでしょ?直接会ってはいないけど、体調を気遣うメッセージとかが何度か届いてたし、自分の事を気に掛けてくれてる人の心配をしちゃいけないの?!」
「ダメだなんて言ってねえだろ!」
「そう言ってるのと一緒だよ!」
一向に進まぬ押し問答にお互く沈黙をコナンが破る。
「…じゃあ質問を変える。あの城でお前が着けてたネックレスは何だ?」
「これでしょ?」
博士の発明品である発信機。
今はブレスレットにしてあるそれを、左手を上げて見せると、コナンの眉間のシワが深くなる。
「とぼけるんじゃねえ、それはブレスレットとして着けてただろ!俺はハッキリ見たんだよ。オメーが着けてたのは、10年前に無くしたはずの父さんから貰ったネックレスだ!」
「……そんな昔の事良く覚えてるね。」
「話を逸らすな。無くしたんじゃなかったのか?」
細めた瞳と呆れたような声色に、コナンは益々不機嫌な顔になる。
「あれは、10年前にあげたの!“バラの男の子”にね。」
「あげた?!だったらどうして無くしたなんて嘘吐いたんだよ?」
「お父さんから、いつか大切な人にあげても良いって言われた話はしたでしょ?だからって早すぎるから黙ってようって、お母さんと決めたの!」
「だったら、どうしてお前がそれを持ってた?」
「彼が落としたのを、私が拾って預かってただけで、もう返した。」
ハッキリと即答する柚希に、コナンは試すかの様にゆっくりと口を開く。
「へぇ…つまり“バラの男の子”も、大阪に来てたって事だな?」
update 2015.06.13