「おい見ろよ!一番てっぺんに着いたみてーだぞ!!」
あれからさらに上へ登ったところで、朽ちて外が見えている部分から顔を出した元太が嬉しそうに声を上げた。
「じゃあ屋根の上にダイヤモンドが!!」
「えーと登る所、登る所…。」
歩美と光彦の声を聞きながらも、柚希はその空間に違和感を拭えないでいた。
(何だろう…この変な感じ。妙にスッキリしてるような………!!)
下にあった太い柱が見当たらないのだと気付いて、慌ててその位置にあたる方向を考えた時、光彦が梯子を見つけたとライトで照らし出した。
(…あそこは、あの柱があった場所!)
「ダメ!それは罠だよ!!」
「よせ!そいつは罠だ!!」
コナンと同時に叫ぶが、元太の手は既に梯子に掛かっていて、子供達と灰原の4人が集まっていた床は、容赦なく暗闇への口を開いた。
jewel.72
〈兄妹喧嘩 8〉
「「「うわあぁぁぁ!!!」」」
「くそっ…?!」
後を追おうとしたコナンが突然身体に回された腕に驚くと、間髪入れずに浮遊感に包まれる。
「柚希っ?!」
「良いから、ボールの準備してっ!」
柚希が自分を抱えて飛び込んだのだと気付くのに時間は掛からず声を上げれば、そう叫んだ柚希が先に落ちた子供達に空いている方の手を伸ばす。
「くっ…!!」
順に子供達を掴んだ手を上へと振り上げていく間に、コナンはボール射出ベルトの調整ネジを弄り、めいいっぱい膨らむように準備する。
そして、自分達が一番下に来た所で射出スイッチを押した。
勢い良く膨らむそれを見た柚希は、このままではコナンを潰してしまうと抱えていた腕を放し、ギリギリの所で体制を変える。
そして膨れたゴムボールの上に何度か跳ねるようにして着地すると、続いて全員が落ちてくる。
「言ってただろ?上に登ろうとすると下に落ちるって…。」
取り敢えず子供達が無事なのを確認すると、落とし穴の幅いっぱいに張ったボールの上で“大丈夫か”という男性の声を聞きながら、柚希は大きく息を吐いた。
「柚希、ちょっと来い。」
上から降ろしてもらったロープを使って何とか下まで降りた所でコナンに呼ばれ、子供達から僅かに離れると、声の大きさこそ抑えてはいるものの、コナンは噛み付くような勢いで怒り出す。
「何でお前まで飛び込んでんだ!危ねえだろーが!」
「重さがあった方があの子達より早く下に行けるんだから、結果オーライでしょ?文句ある?」
「そういう問題じゃねえ!」
「もーうるさい!過ぎた事に口出さないでよ、小学生のくせに!」
「なっ!?オメーこそ、いもっ…てぇ!何すんだ灰原!」
突然頭に走った衝撃に言葉を詰まらせると、その原因である拳を掲げた灰原の姿。
どうやら拳骨を落とされたらしく、コナンは頭に手を当てる。
「あら、余計な事を口走る前に止めてあげたんだから、感謝してほしい位だわ。ヒートアップし過ぎて丸聞こえよ。……柚希おねえちゃんも、子供に喧嘩売っても仕方ないでしょ?」
「…。」
柚希はどこか不満そうな顔をしていたが、子供達を振り返ると笑顔で何でもないよ、と誤魔化した。
そこに、丁度後からロープを伝って大人2人が降りてきた様で辺りを見回している。
「何とか降りられましたけど、最下層に来てしまった様ですね…。」
「てっぺんに行きたかったのに…。」
「屋根の上なら調べたけど、何もなかったわよ?」
同じ考えで既に調べたという女性の言葉に、絶対そこにあると確信していた歩美は小さくウソ…と零す。
その横でライトで辺りを照らしていた元太が、
ふと光を下に向けて目を見開いた。
「お、おい、ここガイコツだらけだぞ!!」
「えぇっ!?」
改めて下を見下ろすと、不安定な足場は確かに大量の骸骨による物。
(幾ら何でも多すぎて気持ち悪い…)
顔をしかめた柚希は、それでも子供達に必要以上の恐怖を与えない様、何とか感情を押し込めようと一度きつく目を閉じた。
「格好からするとトレジャーハンターだな。」
男性が骸骨が身に纏った服装からそう判断する。
あの高さから落ちたら、普通なら怪我は免れない。身動きも取れずに此処で力尽きたのだろうか。
骨を踏まずには歩けない状況に、柚希は心の中でそっと謝罪した。
「こんなおじいさんまで…。」
コナンの影に隠れた歩美が、壁にもたれ掛かった人を見つけて気の毒そうに言うと、遺体と思ったその人の目がパチリと開く。
「ジジィじゃのぉて、ババァじゃよ…。」
「きゃあぁぁぁぁっ!」
コナンの服をギュッと握って悲鳴を上げる歩美を気にも止めず、老婆はよく寝たなどと言いながら欠伸をしている。
「し、心臓に悪い……。」
悲鳴こそ上げなかったものの相当驚いた柚希は、誰にも聞こえない位小さく零した。
update 2016.5.20