jewel.77
〈兄妹喧嘩 13〉
「とにかく…邪魔な人達は居なくなったんだから、そろそろ案内してくれない?お宝の在処に…。」
「えぇっ?!」
「じゃあやっぱりお前…。」
「解けたんだね、あの暗号!!」
灰原の声に柚希から視線を外すと、コナンは子供達に暗号の説明を始める。
それを聞きながら、柚希は灰原に小さく耳打ちで何かを伝えた。
「地下にあった墓石に書いてあったよな?“迷ひし者、我に神器を供へよ”って…。この“我に”っていうのは、三水吉右衛門の三水、つまり
三水に神器の文字をくっつけろって意味だったんだ。見つかった三種の神器の文字は“炎”と“永”と“竜”…。それに三水を添えると…。」
コナンのヒントに、子供達は真剣な顔をして頭の中で漢字を組み合わせる。
「炎は淡路島の“淡”になります!」
「永は水泳の“泳”!!」
「竜は“滝”ね。」
元太は考えても分からなかった様だが、何しろ小学1年生、分からなくて当然だ。
(コナンと哀が側に居るから目立たないけど、この子達はこの年齢にしては十分物事を知っているし頭も良い…)
柚希が改めて感心している中、元太は3つの漢字から何とか意味を考えてコナンに問い掛ける。
「…淡路島の滝で泳げって事か?」
「バーロ、墓石の文字の頭に迷いし者ってあっただろ?これは灯籠の暗号が解けなかった者に対するヒントだったんだよ!灯籠の文字は太陽に一番近くて老人達が集まる場所…。これをさっきの3文字を踏まえて考えると、太陽に一番近いのは太陽系第一惑星の水星で、老人達は髭のある鯉。賑やかな場所は、水音が絶えない場所って事になる。」
子供達の視線を集めながら、コナンはニヤリと笑う。
「つまり、淡水で鯉がいっぱい泳いでいる滝の側に…仁王の石、ダイヤモンドは隠されてるって訳さ!」
その言葉に一気に笑顔になった子供達が、 八岐の大蛇の滝だ、屋敷の中を流れていた川だと意見を出し合う中、柚希はゆっくりとその背後に見える沼の方へと移動する。
「ホラ、耳を済ましてみな。聞こえるだろ?俺達を宝の在処に導く、あの音が…。」
柚希から1m程横を通ったライトの光は、沼の奥に流れる小さな滝を照らし出す。
「そうか!最初に見た沼にあったんですね!」
「すげー!」
「だからコナン君、帰ろって言って外に出たんだね!」
「行ってみよーぜ!!」
元太の声に3人で駆け出すが、すぐに立ち止まった元太に歩美と光彦が激突する。
「い、いきなり止まらないで下さいよ元太く…。」
文句を言おうとした光彦は、元太の視線の先…目の前に仁王立ちしている柚希に気付いて冷や汗を垂らした。
「勝手に動くなと、今日何回言っただろうね…?」
「え…えーっと……。」
見上げた柚希の表情は月明かりが逆光となり良く見えず、淡々とした声色からも読み取れない。
2人が元太にしがみつく形で小さく固まる子供達に上から降ってきたのは、いつもの優しい声だった。
「行かせないなんて言ってないでしょう?動く前にちゃんと私に声を掛けて、一緒に行動しなさい、って言ってるだけなの。分かるよね?」
「「「ご、ごめんなさい。」」」
素直に謝る彼等ににっこりと微笑み、“うん、良い子だね”と言えば本当に嬉しそうな顔をしてくれる。
柚希は3人を引き連れて滝の近くまで行くため、沼の淵を回り込むように歩き出した。
「あいつらまた勝手に!」
「大丈夫、柚希が先回りしてるわ。それより、柚希から伝言よ。“犯人が正体を現したら私が必ず隙を作る”ですって。」
灰原が先程耳打ちされた事を伝えると、コナンは一息吐いてから今回の事件について思考を巡らせる。
「ねぇちょっと…沼に沈められてた遺体、無くなっているわよ…。」
灰原がライトで照らした先、博士と沼から引き上げた遺体があった場所には何もない。
「あぁ…俺達が屋敷に入った後で犯人がまた隠したんだ…。犯行をごまかす為に。」
「何の事だ?」
突然後ろから聞こえた声に、コナンと灰原は驚いて振り返る。
「今言ってた遺体ってのは、何の事だ?」
「聞き間違いじゃないかしら…。」
「何か巻き込まれてんなら、ガキだけじゃ危ねぇだろ。大丈夫だから話しな。」
灰原と顔を見合わせた後、コナンは静かな声で話始めた。
コナン達の後ろの木の影に、気配を消して隠れる老婆の姿があった。
柚希からの言葉で、何か問題が起きている事を悟った快斗は、コナンが男性に説明するのを盗み聞きして状況を把握する。
(灯籠が沈められてたってのは聞いてたけど、遺体を隠す為とはな…。名探偵があっさり話してる辺り、あの男は犯人じゃない可能性が高いが…)
とすると、恐らく殺人犯であろう女性は何処に行ったのか。
そう考えつつ、快斗は柚希の居場所を確かめる様に目を凝らした。
update 2016.9.21