薔薇と宝石の約束




《とにかく、写真を見たなら丁度良かった。その予告状の最初に写ってる花が分からねーんだ。花の付き方はフジみたいだけど、形と色は違うし…》


柚希は先程見た画像を思い出す。


「あれはキブシだね。主に山地にある低めの木の花で日本の固有種。そして、流石に日にちまでは覚えてないけど、4月の誕生花…」


そう言いながら、ベッドから立ち上がりテーブルの上のノートパソコンを立ち上げる。


「んー……あぁ、あった。4月6日の誕生花だね。」

《サンキュー。他に日にちを示すような事は無いから、間違いないだろうな。予告日は明後日、6日の水曜日だ。》


電話越しでもコナンがニヤッと笑うのが分かり、柚希は内心苦笑する。


「ねぇ新一、怪盗1412号って、何か聞き覚えあるような気がするんだけど…」

《え?あぁ、日本ではその名前で呼ぶ奴の方が少ないんじゃねえか?奴の名は、怪盗…》


予告状が破れていたのを思い出し、柚希に教えようとそこまで言った所でコナンを呼ぶ蘭の声が聞こえ、悪いまた掛けると言って電話を切ってしまった。





jewel.9
〈白き奇術師との邂逅 2〉







「あ、コナンくん。夕ご飯何かリクエストある?」


蘭に呼ばれて事務所の中に戻ったコナンは、何でも良いよ!と言って小五郎の方へ向き直る。


「おじさん、予告状の日にちが分かったよ!」

「あぁ?俺もずっと考えてるが、日にちを示すもんなんて何処にも…」

「柚希ねぇちゃんに聞いたんだ!」


聞き覚えのある柚希の名前に、小五郎は斜め上を見つめて記憶を辿る。


「柚希?…………もしかして、探偵坊主の妹の柚希ちゃんか!」


新一を指す探偵坊主という言葉に顔をしかめつつも、コナンは頷く。


「そうそう、柚希帰って来たのよ!つい何日か前に。」


蘭が嬉しそうに言うと、小五郎もさっきまでの考え込んだ顔とは打って変わって明るい顔になる。


「そうか!1年ぶり位か?今度連れて来い、何か食事を奢ってやる。」

(蘭を何処でも連れ回してた俺と違って、あいつは昔から気に入られてたからな)


コナンが呆れながらそんな事を考えていると、小五郎が本題を思い出したのか、コナンに声をかける。


「で?その柚希ちゃんに何を聞いたんだ?」

「花だよ!その予告状の上の方に写ってる花が何か聞いたんだ。そしたら“キブシ”って言って、4月6日の誕生花なんだって!」


それを聞いた小五郎は目を見開いた。


「そうか、誕生花!なるほど、それで日付を表してたんだな!」


納得すると早速、鈴木会長に連絡をするため、受話器を取った。


「それにしても、いつ柚希に聞いたの?」

「あ…この前会った時に電話番号教えてくれたんだ。それに花が好きとも言ってたから、もしかしたら知ってるかなと思ってさっき聞いてみたんだよ。」


不思議そうに聞いてくる蘭に一瞬ギクッとするが、悟らせないように笑顔で答える。
そうだったの、と納得して夕食の準備をしに行く蘭を見て、ふぅと息を吐いた。


(後は暗号の内容だ。幸い予告日までは丸一日ある。必ず解いて捕まえてやるぜ、怪盗キッド!)










翌朝、教室に入った柚希は気持ち悪い位の違和感を感じていた。


(昨日みたいに囲まれないのは有り難いけど、いくら何でも誰も来ないっていうのは極端過ぎる気がするんだけど…)


おはよう、という挨拶は普通に交わすのだが、それ以上寄ってくる人が1人も居ないのだ。

流石に気になって考え込んでいると、後ろから肩を叩かれた。


「おはよう、工藤さん。」

「おはよう。えっと…」


名前が分からず柚希が遠慮ぎみに挨拶すると、満面の笑みが返ってきた。


「私、中森青子。青子で良いよ!」

「あ、私も柚希で良いよ。よろしく、青子。」


柚希が青子の名前を呼ぶと、嬉しそうに笑う。
その様子を見て、蘭を少し子供っぽくしたような子だな、と柚希は感じた。


「ねぇ、柚希。昨日快斗と一緒に帰ったでしょ?アイツに変な事されなかった?」

「え?変な事って…そんな事あるわけ無いよ。快斗は優しいもん。」


ほんのり頬を染めて、僅かに視線を逸らしながら言う柚希に、青子はニヤニヤするのを隠せない。


「ふぅーん。…みんな!プランBだよー!」

「「はぁーい!」」

「え、プランB?何?」


突然クラス中に聞こえる大きな声で叫んだ青子と、それに一斉に返事をするクラスメイトに驚く柚希。

状況を把握出来ずに不思議そうな顔をしている柚希に顔を近づけた青子は、まるで内緒話というように口元に手を添えて囁く。


「昨日2人が帰った後にみんなで相談したの。もし快斗が一方的に柚希を誘って困らせてたら、徹底的に邪魔をするプランA。そして、もし柚希も満更じゃなければ、陰ながら応援するプランB!ってね。」


自分の知らない内にそんな計画が立てられていた事にも驚いたが、それより何より引っかかる部分が柚希にはあった。


「あの、青子?私が満更じゃないっていうのは……」

「快斗の話してる柚希の顔見れば、誰でも分かるよー!青子、快斗とは幼なじみだし、色々協力するからね!」


ウインクまでつけて言われて、柚希はそんなに分かりやすいかな、と思わず頬に手を添えた。

update 2014.10.18
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