「で?そのお嬢様ってのは、何処に居るんだ?」
中森が気怠げに問いかけると、機動隊の青年はハキハキとした声で“今はあちらに”、と壁際の椅子に座る実紗稀の方を指し示した。
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次郎吉の元へ出向いた翌朝、再び展覧会の会場にやってきた蘭と園子は、眠そうにボーッとしていた。
「実紗稀さんとコナン君、元気だよね。」
「ホント、私達より遅くまで起きてたってのに、良くあんなに動き回れるわね…。」
呆れた様な視線の先で、実紗稀はコナンと共に会場を隅から隅まで調べて回っていた。
昨日、実紗稀が次郎吉にキッドを捕まえたいのだと話すと、彼はそうかそうかと自由に動く許可をあっさりくれた。
園子から“今回の展覧会の目玉である宝石を頂く”とキッドから予告状が来ていると聞きやって来たが、それが次郎吉主催のものだから警察なんて通す必要ないという言葉通り、なんの苦労もせずキッドの犯行現場に居合わせる事が出来る。
(ツキは私に向いている、って事かしら…)
想像以上に事の運びが良いと口元に笑みを浮かべると、すぐに真剣な表情でコナンとの会場の下調べに集中する。
キッドの予告は展覧会二日目である明日、日曜日。
時間は閉館後だという事で、その時にはギャラリーを全て敷地外に追い出すらしい。
開館前の今の内に、とコナンと二人で動き回って会場を調べているが、蘭と園子にはそんな元気は無いからと断られた。
その原因は昨夜、まぎれもなく実紗稀が原因だった。
実はキッドについて良く知らない実紗稀は、今までのキッドの犯行を詳しく知りたいと言って、園子、蘭、コナンの三人を半ば無理やり自宅に泊まらせ、話を聞く事にした。
初めこそ任せてと云わんばかりに園子が事件について語っていたものの、実紗稀からの事細かい質問に答えきれず、蘭と二人で記憶を探る事に疲れてその勢いは次第に収束していった。
『それで、そのマスコミの前から姿を消してから、屋上に再び現れるまでの時間は?』
『えーと…どのくらいだっけ?蘭…。』
『私もハッキリは覚えてないけど……十秒位?』
『あ、それ位だったかも。』
『違うよ、約二十秒だった!』
自分達が一生懸命考えて出した答えを尽くコナンに訂正された園子は、突然立ち上がるとコナンに向かって声を上げる。
『あぁもう!ガキんちょ、あんた全部覚えてるなら後は一人で大丈夫でしょ?私と蘭はもう寝るわ!』
『じゃあそこの突き当たりの部屋に全部用意させてあるから、二人共ゆっくりしてね。それでコナン君、その移動したビルはどれ?』
園子と蘭に向かって微笑んでから、実紗稀はすぐにタブレットに表示した地図を覗き込む。
『交差点の角の…これだよ。』
『二十秒でこの高さまで上がるとなると普通はエレベーターと考える所だけれど、ビルの中に入る時間なんて………エレベーター…そうか、滑車を使ったのね。重りとなった仲間は屋上に居たというテレビクルーにでも混ざっていれば…。』
『実紗稀さんって本当に凄いね!』
二人が抜けた事などお構い無しにどんどん進む話に、呆れすら混ざった視線を送ってから二人は言われた部屋へと向かったのだった。
会場の下調べも一段落し、実紗稀が一人会場隅の椅子に座って見取図を広げていると、目の前に人の気配を感じて顔を上げる。
「高嶋実紗稀さんというのは君かね?」
「ええ、そうです。」
「ワシは警視庁捜査二課の中森銀蔵だ。」
「あぁ、今回の捜査指揮を取る方ですね?」
事前に聞いていた名前を名乗られ、実紗稀はゆっくり立ち上がると右手を差し出した。
「私は次郎吉おじ様の許可でキッドを捕まえる為に動かせて頂きますが、警察の捜査の邪魔はしないのでご安心下さい。」
「あぁ、是非そうして頂きたい。」
手を軽く握り返しながらそう言う中森に、実紗稀は微笑みながらそっと手を離す。
二人の姿を見つけたコナンがそっと近付き、聞き耳を立てている事に実紗稀だけが気付いたが、それには構わず真面目な顔で中森を見つめる。
「それでは、今回警察が考えている作戦を教えて頂けますか?」
「何?」
思ってもみない言葉に驚いた中森を他所に、実紗稀はあくまで冷静に話を進める。
「邪魔をしないと約束した以上は、そちらの動きも把握出来ていないと自分の動き方を決められません。もちろん、私がキッドの変装だったら、という心配もあると思いますので…思い切り引っ張って頂いて構いませんよ?」
人差し指を頬に置いて先程とは違う挑戦的な笑みを浮かべると、中森は苦虫を噛み潰した様な表情になる。
「…女性には身体検査を受けてもらう。婦人警官を呼んでくるから、作戦内容についてはその後だ。」
「ありがとうございます。」
にこりと微笑む実紗稀に小さく溜め息を着いた中森は、婦人警官を呼ぶ為にその場を離れようとするが、ふと動きを止めると振り返った。
「一つ、聞いておきたい事がある。」
update 2016.5.31